著者は欧文フォント専門のフォントデザイナー・ディレクター。「ブランドのロゴはなぜ高そうに見えるのか?」という副題が付いているが、欧州著名ブランドのロゴは、既製のフォントをほとんどそのまま使っているものが多いとのこと(p46)。一部のフォントはMacにあったので、ドローソフトのInkscapeでいくつか試してみた。
Futura(フツラ)で「LOUIS VUITTON」と「DOLCE & GABBANA」、Copperplateで「DEAN & DELUCA」、Didot(ディド)で「VOGUE」と「ELLE」、Helveticaで「Lufthansa」、「FENDI」と入力し、「LOUIS VUITTON」の字間を広げ、「DOLCE & GABBANA」は逆に詰め、「DEAN & DELUCA」はLightに、「VOGUE」と「ELLE」はBoldに、「FENDI」は少し字間を詰めると、素人目にはほぼロゴに見えてしまう。なるほど、ロゴを偽造する気はないが、これは面白い。
その他、斜め線が交差しているだけに見えるゴシックの「X」は目の錯覚を考慮して細かく調整されているとか(「O」も同様)、イタリックの使い方や(欧州での)電話番号の表示作法、ハイフンとダーシの違いなどなど、とても勉強になります(そもそもダーシって知らなかった)。
魅力を感じたのは、FuturaやHelveticaよりTrajan(トレイジャン)、そしてOptimaかな。Gil Sans(ギル・サンズ)やFrutigerも。Trajanは古代ローマ時代の碑文をほぼ忠実にフォント化したもの(p24)、OptimaやOptima nova Titlingも碑文の文字を骨格にしているそうです(p92)。フォントデザインの背景にはヨーロッパ文明の長い歴史があるんですね。
ちなみに「ハイフンとダーシ」で検索したところ、小林さんのブログが最初にヒット。まだ一部しか見てないが、本書にも匹敵するような貴重な内容を、惜しげも無く開示されているらしく...
- 感想投稿日 : 2020年7月18日
- 読了日 : 2020年7月10日
- 本棚登録日 : 2020年7月8日
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