浮き草デイズ 1

  • 文藝春秋 (2008年5月16日発売)
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感想 : 62
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「ひとり暮らし○年目」「上京はしたけれど」と似たような話だった。いっそタイトル「上京はしたけれど2」でも良かったんじゃないだろうか?
都会でおしゃれな暮らしをしながらイラストレーターになることをを夢見て上京した著者が、なかなか仕事をもらえないで金銭的に困窮する現実に直面し、いろんなアルバイトを転々する。
他人の私が見ても「なんでそんなに楽観的なの?」とハラハラしてしまうが、どこか気ままで楽しそう。

そんなに明るい内容でもないのに、さほど悲壮感もなく、作者にシンクロしながら読める。
この当時のふわふわした時代感と夢にチャレンジする若さが、良い雰囲気出している。
若さと夢があるってそれだけで生きていく上で強みになるんだな。
なんだかんだで、エッセイ漫画家として成功する才能も持ち合わせているし、郷里に優しい家族がいて心底うらやましい。
美術系の短大に出してもらったうえに、専門学校にも通わせてもらえて、無計画な東京一人暮らしも許してもらえて、時々様子を見に来てくれるって
本当に家族に愛され、大切に育てられたお嬢さんなんだなぁと羨ましくなる。

バイトの面接がうまくいかず落ち込んで気晴らしに街に出かけるエピソードが心に残った。
気軽に誘える友達もいなくショッピングするお金のゆとりもなくただぶらぶらするだけで、高層ビルの展望台から東京の街を一望して部屋に戻りチャーハンを食べゴミを出して、外から自分の部屋の明かりを眺めてベッドに入る
「細やかで小さな光だけど今の私にはここが大事な居場所なんだ」と思いながら眠りこむ。
この余韻を残したラストシーンがとても良い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年6月25日
読了日 : 2023年6月25日
本棚登録日 : 2023年6月25日

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