作家の感性をもって山に登るとこんな愉しみ方ができるのか・・・。山が好きなのでときどき山岳小説も読んでみるのだが、フィクション/ノンフィクションを問わず、「上へ上へ!」「前へ前へ!」という努力&根性ものが多くて、自分の感覚とは合わないでいた。
『草すべり』は、山岳小説というよりは、山を舞台にした人間ドラマだ。ザイルもアイゼンもピッケルも出てこない。主人公(著者)は心を病んでから山に登り始めた老年に近い医師で、山の高さや難しさや数には強い関心がなく、ただ自然の中で、自然のエネルギーを感じながら、自分のペースで歩くことを好む。ぜんぜんがんばらない。文章全体に漂う諦観の念が、なぜか山の空気のように清々しく感じられる。読んだことはないけれど、『アルプ』的な空気感を想像させた。10年後くらいにまた読んでみたいと思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
山
- 感想投稿日 : 2011年10月23日
- 読了日 : 2011年10月23日
- 本棚登録日 : 2011年10月23日
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