デンマーク幸福研究所が教える「幸せ」の定義

  • 晶文社 (2018年11月26日発売)
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[幸福は人生の意味であり、目的であり、人間存在にとっての最終目標]

幸福を研究するとはどういうことか、どのような研究結果があるかについて、あらゆるデータ、学説を用いながら説明しつつ、デンマークが幸福な国である所以と、人々が幸福であるためにどうすべきかを説いている本。



「私たちには持続可能な開発の3つの柱の平等性を重視した新しい経済パラダイムが必要。社会的幸福と経済的幸福、環境的幸福の3つを切り離して考えることはできない。それら3つが合わさって初めて地球の総幸福量を定義できる。」
国連事務総長、潘基文(パンギムン)の言葉。

元ブータンの首相、ティンレーの言葉
「私たちがこの地球に人間的価値を持ち続けたまま生き残るには、現在の発展パラダイムのままでいいのか、世界のリーダーたちが熟慮しなければならない」

幸福には健康を保つ効果があり、肉体と精神の両方の健康を高め、社会の医療費支出を減らす効果がある。→社会的利益

幸福度の高い従業員は、キャリアでの成功を視野に入れていて、それにより年収もあがりやすい傾向にある。
幸福な人は概して自信があり、よき交渉人かつリーダーでもある。
幸せな日々を送っている従業員は新しいアイデアを思いつきやすい傾向にある。

アメリカのボストン郊外のサマービルは、初めて幸福を目標に掲げた都市のひとつであり、市議会を驚かせた結果のひとつは、地域の景観の美しさと市民の幸福に大いに相関関係があったことだった。

幸福には様々な次元がある。
認知的次元、情動的な次元、高次な利他的次元のすべてから測ることで、より複雑なイメージをつかめる。
認知的次元とは、「あなたは自分の人生全般にどれぐらい満足しているか?」人生の全体的、認知的評価
情動的な次元とは、「あなたはきのう、どれぐらい幸せでしたか?」日常的もしくは瞬間的な幸福を評価
高次な利他的次元とは、どの程度自身の人生に意義を見いだしているか、目的意識をもっているか。

幸福度調査のもうひとつの課題は、私たちが物事をどう体験するかと、どう記憶しているかは異なるという点

幸福のセットポイント理論
私たちの幸福量は生まれつき決まっているという考え。短期的に影響を及ぼしたとしても、長期的幸福にはあまりかわりはない。生活環境、家庭の状況が異なる双子の実証でも、お互いの幸福度はあまり変わらなかった。
また、幸福度が決まっているということは、重度の障害を追った人の幸福度は元のレベルに戻らないが、軽度の障害の場合は戻る場合が多い。

ミネソタ大学のリュッケン教授は、私たちの幸福度の最大50パーセントまでは、遺伝子によって決められるという結論を導き出した。

幸福度が最も低いと報告されるのと同じ人生の段階で、鬱を発症するリスクがもっとも高い。

世界一幸福な国デンマークでは、交通事故よりも自殺で死ぬ人のほうが多い。デンマークは西洋諸国と同じぐらいの自殺率。
周りもまた不幸な人たちなら、自分の不幸も受け入れやすくなるが、周りが恵まれているように見えると、自分がさらに不幸に思えてきて自殺のリスクが高まる。

デンマーク人は、互いを信頼している。道ですれ違う人や見知らぬ人まで。(道で赤ちゃんを乗せたベビーカーを置いて両親はカフェでくつろいだりする)

デンマークを幸福な国たらしめる要因とは
デンマークの大半の人たちが自分の生きる道を選べること。両親の収入にかかわらず、教育を受ける自由をもつし、たとえ同性だろうと、好きな人と結婚する自由を持つ。発言し、移動し、考える自由を持つ。

私たちの長期的幸福は収入に比例するが、日々の幸福は増加してもある程度までしか上がらない。
物質主義者で、収入アップにこだわる人の幸福度は概して低い。

豊かな国、豊かな人は貧しい国、貧しい人と比べ、概して幸福であるにもかかわらず、お金持ちになっても幸福になるわけではない、イースタリンパラドックスがある。その根拠としては、 
第一に富の分配の不均衡。
第二により多くの富や物質的なものを手に入れてもすぐに慣れてしまう。
第三に、幸福かどうかの意識がは人との相対的な立場にある。

既婚者は概して非婚者より幸福な傾向がある。(結婚するから幸福になるか、もしくは幸福になりやすい人が結婚するかは議論の余地あり)

デンマーク人は様々なボランティアに参加していて、連帯感が社会にとって重要となっている。

時間と収入のバランスこそが、デンマークが幸福度調査で上位につけている要因

選択の自由を持たないことは、幸福にネガティブな影響をもたらしますが、一方、選択をしなくてはならないこともネガティブな体験するになる。

幸福研究は、本質的に生活の質をどうしたら高められるかの知識を与えてくれるもの。
アリストテレスの指摘どおり、幸福は人生の意味であり、目的であり、人間存在にとっての最終目標

人間の特性のひとつは、常に好奇心を持ち続ける点。これはすべての原動力。

デンマークにだって不幸な人はいる。デンマークは極端に不幸な人の少ない福祉国家。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年4月12日
読了日 : 2020年4月12日
本棚登録日 : 2020年1月13日

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