アーサー・マッケン自伝

  • 国書刊行会 (2023年12月22日発売)
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『アーサー・マッケン自伝』(南條竹則訳,国書刊行会2023年12月第一刷)の感想。
巻末の解説によると、アーサー・マッケン(1863-1947)の自伝的作品『遠つ世のこと Far Off Things』と『遠近草 Things Near and Far』を訳して一冊に纏めたのがこの本。
マッケンの自伝については、短篇集の解説などでたびたび目にし、機会があったら読みたいと思うて居た。それがこの度、南條竹則氏の翻訳で国書刊行会から刊行されました。紙も印刷も美しい。全く有難いことです。
実は『完訳・エリア随筆』が私には難解だったので、社会的背景を理解していないと外国人の自伝的作品は難しいかもと思いつつ読み始めたが、語りがうまい所為か、訳注にも助けられスラスラと読み進めることができました。マッケンさんは優しい。
内容は、故郷カーリオン・オン・アスクの事、ロンドンでの生活、劇団での逸話などの過去が途切れなく、随所に著者の信念の表白を交えて語られる。これはだいたい本書を読む前にマッケンについて抱いていた印象を裏切らない。神秘体験の条は、解説にもある通り、読みどころの一つ。
読後感は『生活のかけら』に近いものであろうか。酸いも甘いも噛み分けた大隠の昔語りが穏やかな境地に誘うてくれます。
そして全体に文章が好いですね。「この世には強すぎて地上の器には容れられない葡萄酒があるのだ」のような文は繰り返し味わいたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自伝
感想投稿日 : 2024年1月11日
読了日 : 2024年1月11日
本棚登録日 : 2024年1月11日

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