とても面白かったです。加賀恭一郎シリーズ、私はこれが未読作品ラストでした。シリーズ読破!最後にこれが残っていたとは。いずれのシリーズも深く重くせつないテーマが多いのですが、この作品はより一層深く重めでしたね。
私の好きな作品のひとつ「白鳥とコウモリ」(加賀恭一郎シリーズではありませんが)同様に、本作も早々に犯人逮捕、事件は解決します。しかし、その真相、真実は、思いもよらぬ方向へ、、そこからが本編となります。深い闇の中を手探りで見つけ出すような、そんな加賀恭一郎の苦悩が展開されるわけですが、本作、犯人と加賀の手記が繰り返されるような構成。ネタバレになるので多くは書けませんが、この作品の醍醐味が成立するにはこの手記構成がとても重要です。まんまとやられます。最終段階に至るまで、真相は全くわかりませんでした。とにかく人の先入観というものは恐ろしいものです。と同時に悪意というものは、誰もがいつどんなタイミングでも生む事の出来るものであり、親密な関係においても他人のそれは到底気付きようがない事もあるわけで、いじめや人間の裏と表、人間が本質的に持ち合わせている感情の恐ろしさみたいなものを改めて感じさせられた作品です。
そして本作では、加賀恭一郎が何故、教師を辞めて刑事になったのか、明確にされています。なるほど、そういう事があったのかと。。人情深く、人の心をよく読み解き、人の心に寄り添う優しい刑事になるキッカケとなっていると思われます。
今までとはまた毛色の違う加賀恭一郎シリーズ、素晴らしい作品に出会えたなと思いました。
引き続き、東野圭吾さん未読作品読み進めていきたいと思います。
- 感想投稿日 : 2024年3月7日
- 読了日 : 2024年3月7日
- 本棚登録日 : 2024年3月7日
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