★3.5
くたびれた団地の窓の向こうから、かさり…かさり…と何かがやって来る。
今夜も一瞬も気を抜けない闇の取引が始まる――。
主人公の柚子は不幸な結婚の末に夫と死別し、今は昼間はコールセンターで
働くフリーターだ。生活はとっても不安定。
義理の母は柚子に息子を殺されたと罵倒する。
そんな義母から逃げる為に、くたびれた団地に引っ越してきた柚子。
三階に暮らす柚子だが、その窓は異界に繋がっていた…。
何の前触れもなく突然やってくる異界の者たちとの闇の取引。
危険と隣り合わせだか、窓の外の哀れな貧しい物の怪たちの来訪を待ちわびる柚子だった。
普通の団地の窓がどことも知れない異世界に繋がる不思議なシチュエーションの物語。
読み進むにつれ、やがて訪れる彼らもまた人間であり、
過去に住む人々らしいという事がわかっていく。
しかし、貧しい生活を送る人々にとっては柚子の容姿や部屋の内部は異世界で、
それゆえに柚子を神とみなし、あがめ始める。
普通の女性に感じる柚子のしたたかさや強さにも驚いた。
昔話や伝説や怪談ってこんな風に始まったのかもって思った。
最後の章で異世界の人の視点での物語は切なかったなぁ。
もっと物語が膨らむんじゃないかって感じた事が少し残念でした。
怖さよりも幻想的で不思議さと切なさを感じる物語でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
奇妙な世界
- 感想投稿日 : 2017年3月6日
- 読了日 : 2017年3月6日
- 本棚登録日 : 2017年2月15日
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