夜が暗いとはかぎらない

著者 :
  • ポプラ社 (2019年4月11日発売)
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本棚登録 : 2027
感想 : 189
4

★4.5

奇跡が起きなくても、人生は続いていくから。

大阪市近郊にある暁町。
閉店が決まった「あかつきマーケット」のマスコット・あかつきんが突然失踪した。
かと思いきや、町のあちこちに出没し、人助けをしているという。
いったいなぜ――?


「あかつきマーケット」を中心にマスコットの「あかさきくん」や
マーケットで働く人々やその周りにいる家族・恋人・友人…の、
13篇からなる連作短編集。

あかつきマーケットの周辺で暮らす普通の人々、
子供から老人までの何気ない日常を切り取って、
一人一人の哀しみや悩みや葛藤・怒り・喜び…色んな感情を
丁寧に丁寧に描かれていた。
色んな感情が溢れていた。
寺地さんはどうしてこんなに人の思い…悩みや苦しみを抱えた人々の
繊細な心理を描くのが上手いんだろう。
優しいんだろう…。温かいんだろう…。
色んな思い出が甦り、想いが溢れ
何度も何度も涙が零れて仕方がなかった。
文中にあるのですが、子供に悩みがないなんて言う人は、
子供の頃を忘れている人だ。という一文。
私も忘れていた人だった。
子供の頃、些細な事だか色んな事に悩んだり傷ついたりしてた。
祖母の事も思い出した…あんなにも愛されていたんだ…。

登場人物達は、過去の私であったり現在の私だった。
これから私かもしれない。
どのお話を読んでも、心に刺さったし、
心に染入る言葉の数々がありました。

多くの人が見えない着ぐるみを着て生きているのかもしれない。
弱さやあさましい気持ちや泣き言や嫉妬を内側に隠して、
他人には笑顔を見せてる。
心のバランスが崩れた事がない人なんている?

沢山泣きましたが、心がじんわり温かくなり
元気を貰えました。
明るい日もあれば暗い日もある。
奇跡は起きなくても一日一日を大切に生きていこう。
頑張ろうって思えました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 連作短編集
感想投稿日 : 2019年6月21日
読了日 : 2019年6月21日
本棚登録日 : 2019年6月9日

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