いなくなった私へ (『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社 (2015年2月10日発売)
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本棚登録 : 345
感想 : 68
3

国民的な人気を誇るシンガーソングライターの上条梨乃は、
ある朝渋谷のゴミ捨て場で目を覚ました。
そこに至るまでの記憶がない…。
通行人に見られて慌てるが、誰も彼女の正体に気付く様子はなく、
さらに街頭に流れる〝梨乃の自殺を報じたニュース〟に梨乃は呆然とした。
いったい何が起きているのか…?

梨乃は高層マンション19階の自宅ベランダから飛び降りて自殺したと報じられているが、
梨乃自身の記憶は前夜帰宅したところで途切れている。
自殺する理由はなく、いくら考えても自分が何故死んだのかわからない。
自殺したなんて考えられない。本当に死んだのか?
それなら、ここにいる自分は何者なのか?
そんな中、大学生の優斗だけが梨乃の正体に気付いて声を掛けて来た。
梨乃は悠斗と行動を共にするようになり、彼の姉のなつみの家に居候して新生活を始めた。
やがて、梨乃のマンションの近くで梨乃を梨乃だと認識できる少年樹に出会う。
樹は、梨乃の自殺を目の当たりにし、驚き車道に飛び出してひき逃げされ死んだと言う…。
三人はこの不思議な、奇妙な現象の謎を追う。

確かに肉体は存在し、容姿も記憶もそのままなのに、死んだとされている。
そして、周囲は別人として認識している。
時折挿入されている手記…インドの古い伝説の手記。
それが、この現象とどの様に繋がっているのか…?
何がどうなつているのか、先が気になって仕方無かった。
『輪廻の泉』
私自身何となくぼんやりですが、輪廻転生って心の何処かで信じています。
それが〝輪廻の泉〟に入ったものは生まれ変わらず、現世で輪廻を繰り返す。
それって、凄く辛く苦しい事なんじゃないか…地獄の様だって思いました。
他の人からは認識してもらえない…酷いって凄くネガティブにばかり思考が行ってしまったけど、
逆に考えれば無念を残して亡くなった人が、条件付きではあるけど、
もう一度生きるチャンスを与えられているのではないか…。

架空の人物になりすまし、病院や警察はどうするのという突っ込み所もあったし、
優斗はともかく、戸籍も無い状態の梨乃や樹はこれからどう生きて行けるのって
現実的な事も頭をよぎりましたが、三人のこれからの明るい未来を感じさせられ
とっても温かい気持ちで読み終える事が出来ました(*˙︶˙*)☆
優斗の立場は、何となく早めに読めてしまいましたが、とっても面白かった♪
三人がとっても良い子達ばかりで、三人の会話も温かくてとても良かった。

著者は東大法学部在学中のデビュー作なのですね。このミス優秀賞
だから、青春も凄く感じました(*´艸`*)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2016年5月31日
読了日 : 2016年5月31日
本棚登録日 : 2016年5月6日

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