仏教要語の基礎知識

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  • 春秋社 (2006年1月1日発売)
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感想 : 2
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原始仏教の姿をほぼ正確に伝える本として、ある人に薦められて読んだ。原始仏教、部派仏教を中心とし、その「教理要目」を体系的にまとめている。かなり煩雑なところもあるが、基本的なところを学ぶには便利な本だ。また、ところどころに大乗仏教との相違点もまとめられているので、その点でも役に立った。

現在私が関心があるのは、ブッダその人は瞑想をどのように説いたのかということだ。原始経典のなかにも多くの実践修道の教えがあるようだが、そのもっとも代表的な実践論は、部派仏教で三十七菩提分法としてまとめられた、七種類の修道説だという。その中でももっとも高い立場の修行法が七覚支で、主として禅定に関係している。原始経典の中には、安般念(あんぱんねん:数息観――出入の呼吸を数えて精神統一をなす)の後に四念所観修し、それから七覚支の修行に進み、明(悟りの智慧)と解脱が得られるとしているものがあるという。

こうして原始経典の段階できわめて多くの修業の体系がしっかりとまとめられている以上、ブッダが瞑想(禅定)を否定したとか、説かなかったとかいう説をとるのは、かなり無理がありそうな気がする。もう少し調べたいとは思っているのだが。

この本の内容でもうひとつ書きとめておきたいことがある。仏教の大問題のひとつに、仏教は無我を説くのになぜ輪廻転生を認めるのかという問題がある。著者は、これについてわずか3行であっさりと次のように論述している。

「外教が説くような常住の実体としての霊魂は仏教ではこれを説かないが、人格の主体としての業(ごう)を保持している霊魂は三世を通じて存在するものとして、これを認めている。それは不生不滅ではなく、輪廻の主体として業や経験に従って常に変化しつつ連続する有為法である。唯識法相の学説では阿頼耶識といわれるものもこれに他ならない。」(149頁)

基本は、まさにこういうことなのだろう。突っ込んだ議論をすると、問題は山ほどでてくるのだろうが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 仏教
感想投稿日 : 2010年8月28日
読了日 : 2010年8月28日
本棚登録日 : 2010年8月28日

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