考えることの科学: 推論の認知心理学への招待 (中公新書 1345)

著者 :
  • 中央公論新社 (1997年2月1日発売)
3.55
  • (29)
  • (76)
  • (76)
  • (12)
  • (6)
本棚登録 : 1055
感想 : 67
4

日々おこなう思考は「推論」の連続である。

推論に関して、3部構成で説明しています。

まず、第1部は「人間は論理的に推論するか」
人がおこなう論理的思考は、よほど訓練されていない限り論理式を操作するような思考はおよそできず、視覚的なイメージを操作しながら吟味していくやり方をとる。
つまり、イメージ的に考える図式表現を使うと、私たちの思考は随分改善される可能性があるということです。
小さい頃から言われていますね。図を書いて考えろと。

第2部「確率的な世界の推論」
第2部はこの本の一番おもしろいところです。事前確率を無視する傾向はなるほどと思いつつ、でも事前確率を無視しないようにするには、どれほどの注意力と訓練がいるんだとうかと思います。
では事前確率を無視する傾向の例題を一つ

感染者問題:
ある国では、男性1000人に1人の割合で、ある病気に感染しているという。検査薬によって、感染していれば、0.98の確率で陽性反応が出る。ただし、感染していない場合にも、0.01の確率で陽性反応が出るという。さて、今1人の男性に陽性反応が出たとして、この男性が感染者である確率はどれだけか。

答えは、0.98(98%)ではありません。なんと、0.089(8.9%)です。 本当?って感じですが、何故と思う方は是非一読ください。ベイズの定理を使って計算してください。

第3部「推論を方向づける知識、感情、他者」
この中の一節の紹介ですが、問題解決をどれくらいの知識量に頼るのか?
できる限り知識量は少なく、応用できる範囲は広いことが望まれますが、実際、物理学の問題をスラスラと解く研究者などの解決過程を見ると、実に多くの問題スキーマや解法の手続きをもっていることが分かる。
単なる知識をマル暗記するだけではだめで、問題を解くためのスキーマ(解法パターン)やヒューリスティックス(常に正解に至るわけではないが、多くの場合、楽に早く正解を見つけられるうまいやり方)が必要である。

問題を解いた経験が他の問題の解決を促進することは、心理学で「転移」と言われます。学習でこの転移を期待しますが、転移がうまく起こることは稀だそうです。
筆者が実際に、小中高を対象とした学習相談を実施しています。一日に何時間勉強したか、どれだけ問題を解いたかだけに注目するのではなく、「なぜはじめはうまく解けなかったのかを考えて、一般的な教訓として引き出す」ことを強調している。こうすることで、次の機会の転移を促す重要な要因になるとしている。

学習アドバイスにするときに参考になることばかりでした。

ただ、これを理解しても、事前確率の考慮など実践できるのか。。。。という印象ももちました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育関連
感想投稿日 : 2013年2月27日
読了日 : 2013年2月27日
本棚登録日 : 2013年2月27日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする