正直「鬼畜の家」というタイトルは私には近づきたくないものを感じるのだが、以前はじめてこの作家さんの「敗者の告白」をツイッターですすめられて読んだときに「東大法学部卒→弁護士として活動したのち60歳で執筆活動を開始」というプロフィールで俄然興味が出て、ぜひほかの作品も読んでみたいと思っていた。今回の作品はそんな著者さんのデビュー作。
開始早々「鬼畜」の名に恥じない(!?)鬼畜ぶり。ふつうの感覚では理解しがたい異常な家族。
異常すぎてリアリティーがちょっと…という声もあるようだが、私は逆にそうは思えず妙にリアルだった。
だって、ほら、実際の事件でもこの家族関係はどうなっていたんですか?と疑問しかわかないその家の住人たちの白骨が次々発見される薄ら寒い事件とかまれに起こって報道されるじゃないですか。
この著者さんの弁護士時代にこういう事件にかかわりがあったのかどうかは知らないけれど、妙なリアルを感じながら読んでいた。そこはこの人の筆の力でもあり、実際に仕事を通してみてきたものの貯蓄のなせる技なのかもしれないと私には思える。
そんな文句ない鬼畜ぶりが脈々とあぶりだされていくストーリーに私は胸糞悪い思いもしながら読んでいったが、最後の最後にえ~っ!と盤上を見事にひっくり返された。
あとから考えれば、なるほど、ミステリなんだからこういう展開は大有りのはず。結局は私の苦手な嫌ミス部類なんだけれど、これは不思議と途中で読むのを放棄できなかった。どこかの感想で見かけたのだけれど「ちゃんとひねりの利いているイヤミス」と評している方がいて、たしかにその通りだと思ったし、そこがこの本の最大の魅力であることに違いなく、それを読まないのはもったいないと思う。
ただ再三いうのだけれど「鬼畜」という名に恥じない鬼畜ぶりなので、読んでいて気持ちのいいものでは決してない。登場人物はこの家族もふくめ、かかわりを持った家族、人物までことごとく異常性を備えている。閉じられた家族という世界で想像しうる性的なことも含まれるので、そういうのがダメな方はこの本は敬遠することをお勧めする。
私の子供がクラスメイトにこういう家族の子供がいると知ったら、ぜったにかかわるな、あの家の子とは遊んじゃダメというタイプだ。
けっきょく類は類を呼ぶということかな。
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- 感想投稿日 : 2023年1月24日
- 読了日 : 2023年1月24日
- 本棚登録日 : 2023年1月24日
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