玉村さんといえばパリの街を紹介したエッセイが素敵で(上品ながらも女性ライターの切り口とはちょっとだけ違う)、私がおフランスびいきになるモトを作ったかたのひとりです。今は国内のご自宅兼農場で悠々自適の自給自足ライフを送っていらっしゃる様子を描いた作品がメインです。これはその「ヴィラデスト」のはじまりを描いたエッセイ。自分の理想の生活をするための土地探しから始まります。あちこち歩いて、やっと見つけたその土地で、思わず「エスト、エスト、エスト!」とラテン語で感激を表現してしまうところに教養とキザっぽさを感じてしまいますが(笑)、その「そこに本当にある」という感激をこの"est"1語で表して「ヴィラデスト」とその地を名づけて住んでしまうのだから、思い入れは並大抵のものではありません。畑を開墾し、家を建て…と1歩1歩着実に楽園を作っていく姿は、「しんどい」感皆無で、希望に満ちています。実際の就農生活は結構大変だし、ハッピーな思いばかりではないはずなのに、この余裕は何?と感じてしまいます。これがヨーロッパで青春を送った人独特の感性でもあるんですが…。作品のすみずみから伝わってくる「人生、結構楽しい」というこの感じが玉村作品のよさで、今でもこの☆の数です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクションも好き
- 感想投稿日 : 2008年9月12日
- 読了日 : 2008年9月12日
- 本棚登録日 : 2008年9月12日
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