山際淳司スポーツ・ノンフィクション傑作集成

著者 :
  • 文藝春秋 (1995年10月1日発売)
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感想 : 4
5

今は「スポーツライター」と名乗られるライターさんも増え、優れたスポーツライティングもたくさんありますが、私にとってスポーツノンフィクションの面白さ満載の本といえばこれです。

名作「江夏の21球」「そして今夜もエースが笑う」など、もうどこから読んでも楽しめます。文句なく☆5つの作品です。個人的に気に入っているのは登山をテーマにした短編です。「8848メートルのラッシュアワー」「雪煙の向こうに何があるか」「ザイルのトップは譲れない」など、控えめでありながら劇的なタイトル。「霧が晴れたら後ろにいるはずの○○がいなかった」といった、淡々としながら一般人には衝撃的な描写に戦慄します。野球やボクシングといったスポーツの激しさとはまったく異質の命のやりとりを描いた短編が、冷ややかな緊張感をはらんで好きです。

あと、山際さんの好みが出ているのが日本人のマラソンランナーに対する短編です。山際さんはどうも日本人ランナーの「△△kmから集団を抜け出しトップに」という戦法がお好きでないようで、アフリカ出身ランナーの最初から「ばひーん」と飛ばしていく戦法のどこがよくないのか、ということを書いておられるのが思わずくすくす笑ってしまいました。現在、駅伝で「留学生ランナーには1区を走らせない」などの論議がありますが、山際さんならどうおっしゃるだろう、と考えてしまいました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクションも好き
感想投稿日 : 2008年3月4日
読了日 : 2008年3月4日
本棚登録日 : 2008年3月4日

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