春の鳥

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  • 2012年9月27日発売
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感想 : 7

この物語の主人公で明日先生がある町で出会った「六蔵」という11歳の子供は知能の発達が著しく遅れている子供でした。
この子供はその為に学校を退学しており、先生はその症状を持つ人のための教育があることを知っていましたが、その教育が難しいことも知っていたためその、難しいということを教えただけでした。

ですがその晩、抜けているところがある六蔵の母親にも六蔵のことを心配する気持ちがあることを知った先生は、六蔵に勉強を教えることに決めました。しかしながら、やはりその教育はとても難しいものだったのです。
これは六蔵の症状を持つ人は一般に数の概念が抜けているといわれていたため「1,2,3」という言葉と数という概念が結びついていないことが主な理由であり、先生も時々涙をこぼしてしまうこともありました。

それでも六蔵の教育を続けていたある日、六蔵が亡くなってしまいます。
先生は六蔵が鳥のことが好きであったため鳥の真似をして崖から飛び立とうとしたのであろう、という考えに至ったためそのことを母親に伝えたところ、母親からは「悲しいが、そのほうが幸せだ」という答えが返ってきました。

この小説のタイトルは「春の鳥」であり、そして物語の途中にはモズやヒヨドリが先生と六蔵の近くにいるような記述が出てきます。
モズは一般に秋の鳥とされておりますが、秋の縄張り争いによる荒々しい声とは打って変わって春には繁殖期のためにかわいらしい声で鳴くため、「春の鵙(モズ)」とよばれ、春の鳥として扱われることもあります。
そしてヒヨドリは季語としては秋の鳥ですが、実際には春になると町中に現れ、文字であらわすと「ピィーヨヒーヨ」と表せるような声を響かせます。

この物語が春の出来事であること、六蔵が鳥好きで「カラス」と何度も言っていること、そして最後は六蔵が鳥の真似をして崖から飛び立ってしまうこと、このため、題名が「春の鳥」になったのだと思われます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月9日
読了日 : 2019年9月25日
本棚登録日 : 2019年9月23日

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