新訂 孫子 (岩波文庫)

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  • 岩波書店 (2000年4月14日発売)
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実戦の体験から生み出された戦略・戦術を説いた、中国最古の兵書『孫子』。人生の問題にも応用できる深い洞察を含んだこの名著を、平易な現代語訳で紹介する書籍。

『孫子』は、『呉子』『司馬法』『尉繚子』などとともに、中国の兵書の代表とされる『七書』に数えられる。この『七書』の中でも『孫子』の内容や文章は格段に優れている。

『孫子』の作者は、春秋時代に呉王の闔廬(前514~497年在位)に仕えた孫武とされている。しかし後代、『孫子』の内容に春秋より後の戦国時代でなければ書けない文章があるとの指摘がなされ、孫武作者説を否定する見方が出てきた。

『孫子』の作者としてもう1人有力視されるのが、戦国時代の斉の兵法家、孫臏である。だが、1972年に発見された新資料の研究によって、『孫子』は伝説通り孫武に関係づける方が自然だと見なされ、孫臏説は影を潜めることになった。

『孫子』は孫武の自著ではない。彼の言葉が、孫子学派というべき伝承の中で育まれたものと見るのが妥当だ。その原型は、戦国中期の孫臏の前か同時期に成立したと考えられる。

『孫子』の内容は十三篇に分かれる。全篇を通じた内容の主な特色として、次の3点が挙げられる。
・好戦的なものではない
・現実主義的な立場から論じている
・戦争に際し、主導性を把握することが重要だと強調している

『孫子』の思想には、『老子』との関係が深いことや、法家や儒家の思想との交流があったことがうかがわれる。思想界が活発だった、いわゆる諸子百家の時代の反映であろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: TP
感想投稿日 : 2023年2月19日
読了日 : 2023年2月19日
本棚登録日 : 2023年2月19日

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