風の歌を聴け (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2004年9月15日発売)
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本棚登録 : 1353
感想 : 106
5

この作品を読むのは2回目である。

前回読んだ時期は2年前のちょうど大学に入学した頃だったと思う。中学校の時はよく本を(主にラノベが多かったかもしれない)読んでいたのだが、高校でぷつりと読むのをやめてしまい、大学に受かって入学するまでの期間に何かのきっかけでまた読書熱が再燃した。風の歌を聴けを読んだのはちょうどその辺りになる。

その頃の感想としてはこれが村上春樹か、正直よくわからなかったなというのが素直な所である。全体を通し平易な文で書かれているので、とても読みやすいのだが、軽い気持ちで読んでいると何も思うことも無く読み終えてしまうのだ。悲しい村上春樹とのファーストコンタクトになってしまったことが悔やまれる。

今回村上春樹の長編を出版順に全部読もうと、ふと志しある程度色々な文学作品に触れたりしながら2年の時を経て、再読してみると前回読んだ時とは全く違った印象を受けた。どハマりしたのである。
正直ここまですごい作品なのだとは思っていなかった。

村上作品の特徴として巧みで新鮮な隠喩がある。一文だけに注目してもこの隠喩を楽しめると思うのだが、他の文の隠喩とも関わりあってまた違う作者の意図を伝えるようになっているのである!これに気づいた時、こんな芸当を出来る人間がいるのかと一気に鳥肌が立った。そして細かく注意して見返してみると至る所にそういった驚くべき表現の仕掛けが施されているのだ。個人的に言わせるともうハマるしかない。

少し話が脱線するが、自分はエヴァンゲリオンが大好きだ。雰囲気だけでも楽しめるのだが、細かい所を見ていくと作り手の意図を上手く目立たないように隠してあったりして、それを見つけるほどに深く作品にのめり込んで楽しめるところが大好きなのだ。自分は村上春樹にエヴァに似た楽しみを感じた。村上春樹作品は自分が作品に深く向き合えば向き合うほど、より深い楽しみを提示してくれる作品だと思う。

もし他の作品全てに風の歌を聴けに通ずるものがあるのだとしたら村上春樹を一生追いかけたいと思った。この先の期待も込めて評価は星5にした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年6月3日
読了日 : 2020年6月2日
本棚登録日 : 2020年6月2日

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