理学と工学,そして組織と政治。二代のはやぶさを取り巻く日本の宇宙開発事情を扱った,非常に中身の濃い良本。
「はやぶさ2ってこんなにスゴい」みたいな単純な豆知識を集めたものとは一線を画した真面目な本。開発者・研究者の人となりに焦点を当てて一般受けを狙うようなものでもない。ペンシルロケットから現在までの経緯を踏まえ,今後日本が宇宙探査をどうやっていくかという大きな話に繋げていく内容。力点は科学技術そのものではなく,日本の宇宙開発が国内政治や海外の事情にいかに翻弄されてきたかに置かれている。
もちろん,軌道力学の初歩や宇宙機の基本など,太陽系の科学や探査機の技術についてもしっかり触れていて,そこだけでも勉強になる。初代はやぶさの経験した技術的トラブルと劇的な帰還も読みごたえあり。さらにそこから進んで,行政と政治の厳しいハードルを乗り越えてはやぶさ2があり,これからの宇宙探査があることを強調したのが本書の特色だ。まさに著者ならではの仕事だと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
物理・宇宙
- 感想投稿日 : 2014年12月11日
- 読了日 : 2014年12月11日
- 本棚登録日 : 2014年12月11日
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