はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.96
  • (7)
  • (12)
  • (4)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 110
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882910

作品紹介・あらすじ

打ち上げが間近に迫った「はやぶさ2」。初代はやぶさは、数々の困難を乗りえて、無事地球に帰還し、多くの日本人の心を揺さぶった。
 国民の熱狂的な支持を受けて、後継プロジェクト「はやぶさ2」も順調に進むはずだった。しかし、はやぶさ2の歩みは難渋した。なかなか必要な予算が付かず、2012年にはあわや計画中止かと思われたこともあった。
 なんとか予算はついたものの、日本の宇宙開発を取り巻く環境はきわめて厳しい。現在、はやぶさ2は、日本で正式に予算がついて動いている唯一の宇宙探査計画だ。今後のプロジェクトに弾みをつけるために、はやぶさ2の成功は必須である。
 本書で、宇宙探査の系譜をたどりながら、はやぶさ2プロジェクトの全貌と日本の宇宙開発をとりまく状勢を解説する。

堀江貴文(ホリエモン)絶賛
「はやぶさ本の最高傑作!宇宙探査への国家的無策のために、はやぶさ2の大冒険は地上から始まっていたのだった!(涙)」

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 理学と工学,そして組織と政治。二代のはやぶさを取り巻く日本の宇宙開発事情を扱った,非常に中身の濃い良本。
    「はやぶさ2ってこんなにスゴい」みたいな単純な豆知識を集めたものとは一線を画した真面目な本。開発者・研究者の人となりに焦点を当てて一般受けを狙うようなものでもない。ペンシルロケットから現在までの経緯を踏まえ,今後日本が宇宙探査をどうやっていくかという大きな話に繋げていく内容。力点は科学技術そのものではなく,日本の宇宙開発が国内政治や海外の事情にいかに翻弄されてきたかに置かれている。
    もちろん,軌道力学の初歩や宇宙機の基本など,太陽系の科学や探査機の技術についてもしっかり触れていて,そこだけでも勉強になる。初代はやぶさの経験した技術的トラブルと劇的な帰還も読みごたえあり。さらにそこから進んで,行政と政治の厳しいハードルを乗り越えてはやぶさ2があり,これからの宇宙探査があることを強調したのが本書の特色だ。まさに著者ならではの仕事だと思う。

  • はやぶさおよびはやぶさ2に関して,これ以上の参考書はない,と断言できる.はやぶさシリーズを通して,日本の科学技術政策の惨状を目の当たりにし,涙無しには読めない.やりたいことの規模が大きく膨らみ,自分達の掌を大きく横溢してしまったとき,我々航空宇宙工学者は如何にしてパイオニアたるべきなのか.

  • 日本の宇宙開発の命運を左右する「はやぶさ2」。日本の宇宙開発に最も詳しい著者が、「はやぶさ」から「はやぶさ2」へ、さらにその先へという宇宙探査の系譜とその実際を解説する。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40216952

  • 東2法経図・6F開架:B1/2/2291/K

  • 180929 中央図書館莫大な予算を必要とするこういう科学プロジェクトは、理学と工学の危うい緊張感が、良い方に転んだときに初めて成功する可能性が生まれるということ。

  • 安く売ってたので購入。しかし良書であった。宇宙航空技術の詳細な説明に始まる、技術屋をワクワクさせる導入から、特に日本の宇宙技術フォーカスした、地球では目にかかれない機械や理論まで、宇宙が身近に感じられる一冊。後半は、長い投資が必要な宇宙分野へいかに政治的、組織的な動きが必要か、著者がわかってるこれまでの苦労、後悔、それに基づく未来への戦略が語られており、読んでいてとても応援したくなった。

    感動したところは様々にあるが、特に、2015年現在、日本の宇宙予算は190億に対し、アメリカは721億ドル。歳入規模は2.2倍程度であることを鑑みるに、やはりなんとかならないものかと思った。(日本の歳入の半分は借金返済であると歳入は4倍ほどちがうとみたほうがいい。いや、しかしそれでも、著者のいう、国家としての宇宙への意志は弱い。)

  • とりわけ技術的な説明が詳しい本で、内容に唸らせるものがある。日本の宇宙開発の政治的要因を意識した筆致がさらに重みを与えている。はやぶさ、はやぶさ2に限らず、今後の宇宙開発を考えるにあたっての必読書。

    ・イオンエンジン、太陽電池パドル、各種のアンテナ、スイングバイ。パラボラアンテナを使った高速通信は、イトカワの観測データを送信するときだけ使用するから、太陽電池パドルは同じ向きでよい。

    ・探査機の目的は「小惑星からサンプルを持ち帰る」ではなく、「小惑星からサンプルを持ち帰るために必要な様々な技術を実地で実証する」と設定されていたこと。

    ・『サイエンス』の2回の特集の内容紹介も嬉しい。「イトカワ」に内部構造があること。微粒子から分かる「イトカワ」生成の経緯。

    ・はやぶさ2の目的地は、C型(炭素)小惑星。イトカワはS型(岩石)小惑星。

    ・はやぶさ2は世界中の地上局から追跡管制する。

    ・はやぶさ2は外は予算で締め付けられ、内では理想の科学観測を求める科学者の葛藤を抱えていた。

    ・ロケットは、インフラ。最低2種類、それも全く違う技術系統が必要。H2は液体推進剤、MVは固体推進剤だった。

    ・H2Aは地球を回る静止軌道への打ち合わせのために最適化設計されており、「推進剤の温度が一定以上に上がってはいけない」などの制限が厳しかった。

  • 3分の1ほどが初代はやぶさの話、それから一般的なロケットの話.はやぶさ2が出てくるのは真ん中くらいから.やっぱり打ち上げにお金を取ってくるのが大変なんですね.知り合いの物理学者が言ってたけど宇宙飛行の開発の過程で日常役に立つ発明はあるけど、実際宇宙から持って帰ってきた情報は膨大な費用に見合うものはないんだって.そういえば初代はやぶさが小惑星イトカワから持ち帰った塵はその後どうなったのでしょう?

  • 2015年2月新着

  • 初代「はやぶさ」の旅路をふりかえりつつ、先日打ち上げられた「はやぶさ2」の技術的背景と、日本の今後の宇宙開発に向けての提言を述べた本。「はやぶさ2」に関する本は数多く出版されていますが、日本の宇宙開発に造詣が深い著者のこの本は信頼感があると思い、手に取りました。
    探査プロジェクトはその立ち上げから考えると20年を越える時間スケールが必要(初代「はやぶさ」もルーツは1985年にさかのぼる)で、初代「はやぶさ」で蓄積された技術を継承するためにも世間の注目が集まる今こそ「はやぶさ2」の次の探査プロジェクトを具体化する必要があると著者は力説します。
    日本の宇宙開発が情報衛星や気象衛星など実用重視に偏重しつつある今、「太陽系探査などの純粋科学に限りある予算(出所は税金)をどの程度振り向けることができるのか」は、政府が定める「宇宙基本計画」に沿って今後の宇宙開発が進められる状況である以上、我々国民の意識次第であるという著者の主張は重要な意味を持つと思います。

全12件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~1992年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

「2022年 『母さん、ごめん。2 ― 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

松浦晋也の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×