増補 スペースシャトルの落日 (ちくま文庫 ま 38-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480426895

作品紹介・あらすじ

2010年秋に退役予定のスペースシャトル。機材を再利用し、低予算で宇宙への定期運航を実現させるというコンセプトのもと、年間50回の打ち上げを目指したが、実際は09年でわずか5回だった。一方で費用は大きく膨らみ、さらに国際宇宙ステーションの完成遅延など、宇宙開発全体に大きな影響を及ぼしている。なぜ、どこで計画が狂ってしまったのか。文庫化にあたっては大幅に加筆し、最新の現状をレポートする。

感想・レビュー・書評

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  • スペースシャトル。いや、当時は「宇宙バス」って表現もあった。年間50回打ち上げるってのは夢があった。
    まあ、夢を現実にする技術的裏付けが足りなかったわけだけど。
    「ソ連の衛星を捕獲したい」という国防総省の要求
    「地元の選挙区にも仕事を廻して欲しい」という議員筋からの要求
    これらによってねじ曲げられた結果、本質的な欠陥を抱えたまま宇宙に飛び立ったスペースシャトルは、そして確率論の手により、二度の大事故に…

    とはいえ、外部燃料タンクとの接続装置や着陸脚を耐熱パネル側につけない設計案は無かったのだろうか?と言う疑問は尽きない。
    そして、液酸/液水エンジンという誤った技術の流行の問題点も指摘しているが、それは始めに「スペースシャトルみたいなのがうちも欲しい」という気持ちを優先しすぎた過ちであり、そこまでNASAの責任にするのは訳がわからない。各国の判断ミスだし、判断ミスに基づくアリアン5の様な成果もある。アリアン5という巨大ロケットが出来たことによって、大型商用衛星の市場が生まれた訳であり、一概に鬼子扱いするのは無理がある。
    そして、筋の悪さを指摘されていたスペースシャトルのレガシーを最大限転用することありきから始まったコンステレーション計画も、結局はオバマ政権によって(順当に?)中止されることとなった。
    技術開発って奴は一度手を抜くと取り返すのがとてつもなく大変なんだなと。
    ☆3.5ってとこなんだけど、辛辣すぎるタッチと解説の人選(堀江貴文は無いわ)で☆0.5を引いて☆3つとする

  • 宇宙の現実を目の当たりにしてしまった。。。でも、知っておくべき事実に変わりはない!

  • 増補 スペースシャトルの落日 (ちくま文庫)

  •  スペースシャトルと言えば先端技術の塊というイメージだが、純粋に技術的見地から評価すると必ずしも最適な設計ではなかったと言うのが著者の指摘だ。ではなぜ純粋に技術的見地から設計されなかったのか。要約すれば政治経済の介入だ。

     アメリカという民主主義国の国家予算で作られるのだから、政治経済と無関係でいられないのは仕方ないだろう。しかし、そのために事実が歪められ世界的に流布されて神話が形成され、さらには諸外国の技術者に大きな勘違いをさせてしまったとなると、罪は軽くない。

     同情の余地はあると思う。しかしながら、繰り返されて良い愚行ではない。だが残念ながら、繰り返されないと信じられるほどには教訓が生かされていない。たぶん、まだ同じ失敗は繰り返されるだろう。残念ながら。

  • スペースシャトルは翼があっていかにも未来っぽくてカッコいいと思っていたのは遠い昔。ファルコン9の一段目再利用計画の方が素晴らしいと思える。

  • アポロが月へ行ったころに生を受けた世代である自分にとって、「僕らの時代の宇宙船」だったスペースシャトルの根本的な欠陥と限界。 巨大プロジェクトに避けられない病弊がシャトルにも有ったことがおもしろい。
     また、「次の時代の宇宙船」がどうあるべきでまたどうなりそうなのか、著者の考察と最新の情報が興味深い。

  • 2010年で退役が予定されているスペースシャトル。 しかし、その後の後継機の話は聞いたことがあるだろうか?
    スペースシャトルが登場してから30年間にわたるアメリカの宇宙開発の理想と現実が書かれている。
    文庫化にあたり2010年1月現在の宇宙開発の状況とホリエモンが解説した文章が加筆されている。
    宇宙開発の最先端だと思っていたアメリカの宇宙開発の実態を知ると考え方が変わってくる。

  • スペースシャトルがいかに安全なものではなく、しかもコストがかかるものかということが分かる。
    なかなかおもしろい。

  • スペースシャトル自体の設計思想について根本的に間違っていたという
    内容からそれによって引き起こされた宇宙開発への影響が書かれている
    こういう視点でスペースシャトルのことが書かれているのは読んだことなかったので興味深かったが、ただ、あまりにもスペースシャトルのせいにするのはいかがなものかとヨーロッパや日本がスペースシャトルもどきを開発したのはそれぞれかの国の判断なんだからそれぞれの判断ミスでしょう

  • スペースシャトルは凄いものと(根拠もなく)思っていたが、筆者の様に考えると、そう単純でないことが分かった。宇宙という地上とは全く環境の違う所で使うものを地上の感覚で考える間違い(翼は有害でしかない)は、目から鱗だった。
    宇宙産業ほどスケールの大きなことでなくとも、モノ作りに役立つ考え方が随所に述べられているので、メーカー勤めのサラリーマンにもためになる本だと思う。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~1992年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

「2022年 『母さん、ごめん。2 ― 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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