宮崎駿氏自身は伝えたいことがあったとしても、ここまで深読みをして作品を構成したとは思えない(実際、たとえば本の中で指摘された湯婆婆の服の色についても、宮崎氏は当初は赤にこだわっていたが、背景画との絡みでの視覚効果について部下のイラストレーターから説得で偶々青に変えたという経緯がある)が、そのような偶然も含めて作られた作品が、このように深い示唆を与える世界観になっていることは面白い。むしろ、意図して書こうとしたのではないからこそ、人類に共通して奥深くに沈んでいる神秘が宮崎氏の無意識を通じて作品に表れてくるのだと思う。
いちばんおもしろいと思ったコメントは、ハクは千尋を助けるために油屋に招きいれたが、ハクを助けるために不思議な世界に千尋を招きいれた、湯婆婆を超えた存在があるのではないかという意見。
ファンタジーと心の成長について考えさせてくれる本。
脚注もかなり細かくかかれており、引用本・参考本が多彩で著者の知識の囲の広さが伺える。ここから芋づる式に読み深めることも可能。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
70 芸術、美術
- 感想投稿日 : 2013年10月19日
- 読了日 : 2013年10月19日
- 本棚登録日 : 2013年10月19日
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