かくかくしかじか 5 (愛蔵版コミックス)

著者 :
  • 集英社 (2015年3月25日発売)
4.47
  • (214)
  • (101)
  • (42)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 1206
感想 : 126
4

故郷を離れ、大阪で、漫画家として忙しく楽しく充実した日々を送る明子。
明子に届いた衝撃の知らせは、故郷の絵の先生・日高が肺癌で余命いくばくもないというもの。絵画教室には今年も美大の受験生が大勢いる。日高先生は明子に、帰ってきて塾を手伝えというのだ。
ともかくも、一度、明子は故郷に帰る。
だが、日高先生は思ったよりも元気そうだった。一方、漫画の方は長い巻頭カラーの仕事も入り、切羽詰まった状態だった。明子は後ろめたさを感じつつ、大阪に戻ることにする。
そのうちに大学時代の彼氏も卒業して大阪で就職することになる。2人で一緒に暮らし、しゃかりきに漫画を描き、〆切が終われば漫画家仲間とパーティーをし、という怒涛の日々。
気が付けば先生のことは思い出さなくなっていた。

後悔はいつも、間に合わない。
無敵に見えた先生もスーパーマンではない。
病は確実に進行し、逃れようもなく別れの時は来る。
先生が亡くなった知らせが来て、故郷に帰った明子は、教室の後輩から、先生の最後の言葉を聞く。

先生は最初から最後まで明子に絵を描かせようとし、一方で、明子は、漫画を描くことしか頭になかった。
若干ねじれた師弟関係だが、それでも日高先生のシンプル極まりない教えは、明子の背骨を作っている。
描け

徹頭徹尾、先生の教えはこれだった。
竹刀でバシバシ叩かれながら、理不尽さにひぃーひぃー泣きながら、来る日も来る日も描く。時代遅れとも言われそうな、そのスパルタな日々が、その後の支えとなる。
辛いときも、苦しいときも、「描くことに救われ」てきた。
そう言い切れることが、日高先生が明子の師であった証であるのかもしれない。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2023年8月25日
本棚登録日 : 2023年8月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする