自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心

著者 :
  • エスコアール (2007年2月28日発売)
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著者は1992年生まれの詩人・作家。5歳のときに自閉傾向があると診断され、小学5年生までは普通学校に通うが、以後、養護学校に編入して中学までを過ごし、その後、通信制の高校を卒業している。
パソコンや文字盤を使って外部とのコミュニケーションを行うという。
自閉傾向は強いが、知的障害はさほどないとのことで、絵本やエッセイなどの著作もこれまでに何冊かある。

本書は2007年初版刊行でさほど新しくはないのだが、図書館の予約が非常に多く入っていた。自分もかなり前に予約したので、何を見て興味を持ったかよく覚えていないのだが、新聞記事か読書コーナーで紹介されていたのかもしれない。
数年前の本がなぜ注目を浴びていたかといえば、多分、テレビ番組で取り上げられていたことが大きかったのだろう(すでにDVDが発売されているようだ)。内容としては、本書が、自身も自閉症の息子を持つ英国人作家の目に留まり、英訳されベストセラーになる経緯を追ったものであるようだ。

本書は副題の通り、著者が中学生のときに記されたもの。質問に対する答えの形式で、1,2ページの短いエッセイが、60ほど収録されている。その他、短編小説やショートストーリー、ちょっと言いたいことが挿入される。
質問は、自閉症について、一般の人が疑問に思いがちなことであり、例えば表題にも採られている「なぜ跳びはねるのか?」をはじめ、「どうして耳をふさぐのか?」、「どうして目を見て話さないのか?」、「どうして繰り返し同じことをするのか?」といったものがある。
直接の会話は苦手だが、筆談やパソコンでならこうした質問にも答えられるということのようだ。但し、著者も相当の訓練を積み、お母さんの助力も大きかったようで、自閉症の人の誰もがこうした能力を身につけられるというものではもちろんないのだろう。

内容としては、端からこのように見えるかもしれないけれども、実際にはこう思っているんだ、という、いわば自閉症の心の内の通訳ということになる。
実際には、著者の言葉を読んでいただくのが一番よいのではないかと思う。
全般としては、ある意味、自分の内部に閉じ込められ、外とのつながりを作るのに非常に努力を要する状態なのかな、という印象を受けた。外の刺激が強いと感じたり、恐怖心をあおられたりということが、自閉症でない人よりも甚だしいのかもしれない。
自分の身近に自閉症の人がいなかったこともあってか、今ひとつぴんと来ないことも多いのだが、日々、近くで接しているような人だと「あの行動はそういう意味か」など、納得できる点が多いものなのかもしれない。

声を発しにくい立場の人の内部からの声という点で、貴重な本なのだと思う。


*ショートストーリーの中の「カラスとハト」が印象に残りました。

*自閉症の動物学者、テンプル・グランディンを思い出します。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2015年7月13日
読了日 : 2015年7月13日
本棚登録日 : 2015年7月13日

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