母ではなくて、親になる

  • 河出書房新社 (2017年6月15日発売)
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感想 : 101
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自分としては著者の小説よりもこのエッセイの方が面白かった。
著者の夫が「家父長的」価値観から真逆の人で、子育てと仕事を夫婦で協力してうまく両立している。
なんといっても夫の愚痴や子育ての辛さの記述は全然無いのが読んでいて気持ちいい。

子がキウイやバナナを皮ごと食べてしまった話があったが、
うちの子も小さい時、カットされた皮つきスイカが目を離した隙に丸ごと消えていた事件があった。どこも似たことあるのね。

抱っこ紐を買いに行ったときに著者が目をつけていたものでなく、夫が選んだものを尊重したのはちょっとすごい。びっくりした。
夫のことを決断力が無い、所得が低い、と言いつつ、本当に対等に子どもの親として夫をみている。

それと作家業や子育ての過程を、それそのものとして楽しんでいるという話も好き。
お金や賞のため、子どもの将来のためとかそういった目的のための「手段」でなく、
書くこと、育てること自体が「目的」という考え方いい。理想。

「今、一所懸命に自分のために書く。それだけでいいじゃないか、という気持ちになってきた。
それと同じで、赤ん坊と過ごしている時間が、この先に何にもならなくてもいい。
私が今、赤ん坊と一緒にいて楽しい、それだけでいい。」


あと、自分が大学生の時に勉強した発達心理学の発達過程についての記述が目につく。学術的にでなく普通に平易な文章で「こういうことしてるからこうかも」とかだけど。
「さすが作家さん、心の変化を確実に捉えている」と思った。
自己の意識の認識とか、対象物の永続性の認識とか、未来過去の感覚がつかめてきたりとか。

続編あれば読みたいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月16日
読了日 : 2024年3月16日
本棚登録日 : 2024年3月16日

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