流塵 神尾シリーズ4 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (1996年3月19日発売)
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感想 : 3
4

「地獄にまで、ついてくるのか、おまえ」
ラストの一言に心臓鷲掴み・・・!!

また日本じゃないです。
舞台は中国からウィグルへと向かう奥地。
神尾が「とりあえず」なんていうほど、先の見通しも立たない仕事始めでした。
ボクシングの師である長坂からの依頼で、ウィグル人のジューを探しにきた。そして連れ戻す。
その仕事のために、神尾はまた眠れない夜が増える・・・

なーんて、暗い神尾は置いといて!(主人公なのに・・・
秋野は秋月くんにむちゅー☆
上記のセリフは、自分でも死んだと思った神尾が秋月の顔を見たときのもの。
ついていきますとも!!
弁護士で英語スペイン語フランス語中国語も話せて司法試験に通ったお祝いにパパにフェラーリを買ってもらった男!
この二年で半端なく強くなっちゃった男・秋月!
それは自分のせいだって、気付いているのかしら神尾!
秋月くんの登場はすごく少ない。
だけど、神尾に信じられて、頼りにされる男になった秋月くん。
これが惚れずにいられようか!

神尾は強い男と見えて、本当は誰より弱いのではないかと思う。
弱いだけ、誰より強い。
それが、悲しい気持ちにさせる。
カシュガルという地に着いて、右も左も言葉もわからない神尾に声を掛けてきた中国人の陳。
一度は持っていた志を折られ、頭が良いだけに卑屈になっていた男。
神尾は出会ったころの秋月を思い出す陳に仕事を持ちかけ、一緒に動くうちにもう一度陳に志と男を取り戻させる。
神尾は相手を突き放すような言葉を選ぶけれど、誰よりその相手を強くしたいと思っているのだ。
そして、強くなった相手を好きになり、先に旅立たれることに涙を流さず悲しむ。
こうして、神尾はまた夜が辛くなってしまうのだ。
陳の最後、神尾が欲しがった煙草をあげるシーンは淡々と書かれているようで、ぐっと秋野の心を掴んで離さない。
神尾の夜と一緒に、秋野の夜も長くなりそうです。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 北方小説
感想投稿日 : 2009年4月20日
本棚登録日 : 2009年4月20日

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