サイバー・ショーグン・レボリューション 下 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (2020年9月17日発売)
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感想 : 8
5

三部作を読了。 まず読み終えたことの達成感を感じる。
今作のラストには前作のような爽快感はなかった。〈新アメリカ人〉の新幹部になった守川励子による〈戦争の息子たち〉の残会員襲撃は、終わりなき戦いを連想させる。

マックがいなかったのは残念だが、ノリとくじらが出てきたのは嬉しかった。パイロットの手腕は衰えなく磨かれている。ノリがアフリカ系だったことに驚いた。
グリセルダとマックはどうしているのか気になってしまう。十中八九結婚はしているだろう。くじらのいる島で挙式をしたかもしれない。

主人公二人の視点が頻繁に入れ替わるのが面白かった。
2人のトラウマがサイバーバブルで鮮明に思い出すシーンはかなりつらかった。

ブラディマリーが槻野昭子だったのはなかなか衝撃だった。
革命から始まり、最後に再度革命が起き東京参謀本部との争いも避けられない状況になる展開は確かにサスペンスとも感じられた。

励子が敵として対峙した人物には身内が山崗将軍に処刑されたものも多く、その境遇は励子とビショップの身内が死んだ理由と似ている。しかし信条の差異で殺しあわなければならない。みんな皇国を、臣民の安全を憂慮しての行動だった。しかしトップにいつも邪魔されていた。多村前総督は悪人だったのか、山崗新総督は善人だったのか。後者は体制を維持するためにたくさんの処刑を実行した。それを許せない渡部プリスの気持ちはわかる。ダニエラが理不尽に拷問の挙句両足を残虐に失うことになったのは悲痛きわまりない真実だった。 唯一無二の親友と殺しあわなければならない悲しみはいかほどのものだったか想像に絶する。
ビショップがサイバーバブルで体験した元妻とのいきさつ、ナチスから受けた拷問。辛く苦しい描写だった。描写を思い出すときつすぎてどうにもならない感情が滞留する。しかもロケットパック隊の真実は生還を前提とされない情報収集のための撒き餌だったのが痛々しい。人間の考えることの残酷さと容赦の無さに辟易する。

ラスト後は〈新アメリカ人〉がUSJの代表として東京と交渉の矢面に立つことになるのだろう。
励子とビショップの関係はどうなるのだろう。気になってしょうがない。

争乱の時代はまだ鎮まる気配を見せない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月13日
読了日 : 2023年8月13日
本棚登録日 : 2023年8月13日

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