スタータイド・ライジング 上 (ハヤカワ文庫 SF 636)

  • 早川書房 (1985年10月1日発売)
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本棚登録 : 227
感想 : 15
5

デイヴィッド・ブリンの<知性化>シリーズ第2弾!
著者の同シリーズは第3弾の「知性化戦争」が初読でしたので、時系列的には逆行しておりますが、それぞれ独立した物語なので特に支障なし。とはいえ、「知性化戦争」でも時折触れられていた”探検船<ストリーカー>の銀河を揺るがす大発見”について、ようやく全貌を知ることができました。

人間とイルカで編成された初の宇宙探検船<ストリーカー>は、銀河の辺境で大宇宙船団を発見する。一隻が地球の月ほどの大きさをもつ五万隻の船団は、どうやら太古から存在しており、銀河に住まうあらゆる宇宙種族の<始祖>と関係があるようだ。情報を聞きつけたタンデューやソロ族といった列強諸族は、その秘密を手中に収めるべく、それぞれ大戦隊を派遣。追われるストリーカーはモーグラン宙域で奇襲を受けるも辛くも脱出。現在、傷ついた船を修理すべく、惑星キスラップの海底に身を隠すが、列強諸族はいまにも迫っており…

列強諸族、始祖、タンデュー、ソロ族…、知性化シリーズはとにかく造語が多い!これに加えて、人間やイルカの登場人物も多いので、混乱することもしばしば。とはいえ、親切なことに巻頭に用語一覧が掲載されており、混乱した時は読み返せるのでちょっと安心。

さて、物語はというと、これがまあおもしろい。
「知性化戦争」では、知性化されたチンパンジーが主役といっていい役割でしたが、本作ではイルカがそれに該当します(もちろん人間のトムやジリアンも活躍しますが)。物語の要旨はあらすじのとおりなのですが、列強諸族の追撃から逃げる一方で、知性化されたイルカの内紛や惑星キスラップの秘密が組み合わさり、これらをきっかけに<知性化>の背景を知ることになっていきます。
と、「知性化戦争」でも感じましたが、こういったSF色のしっかりした骨太の世界観に圧倒されるのです。本書で繰り広げられる物語は作中の時間軸でもほんの僅かな期間ですし、その舞台は惑星キスラップ(およびその宙域)を出ません。そんな限られた時間と範囲の物語にもかかわらず、壮大な印象を抱くのは、ひとえに著者が作り出す<知性化>の世界観が緻密で雄大、奥行きの感じるものだからでしょう。そんな圧巻の世界で、心滾る熱い展開をみせられたら、これはもうおもしろくないはずがありません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2018年5月27日
読了日 : 2018年5月19日
本棚登録日 : 2018年5月19日

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