国商 最後のフィクサー葛西敬之

著者 :
  • 講談社 (2022年12月14日発売)
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感想 : 16
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瀬島と同じく、松崎についてもまた、多くの説明はいらないだろう。(P.88)

こんな本読む人には常識なのかもしれないが、結局この文に違和感ない人におすすめ。JR東海元社長の葛西敬之の行動を通じて、国鉄分割民営化、企業内左翼活動、官邸・霞ヶ関からNHKの人事、リニア計画まで幅広く描く。著者の調査範囲もなかなかのもの。

著者は葛西を”国士か政商か”、”自ら進める事業や政治への介入が日本の国益になると信じて疑わない。しかし、現実には当人の願いが本当に正しいのか、疑わしい場面を多々見受けた。葛西の言動は単純に国士という賛辞だけで片づけられない。強いてその実像を表せば、政商ではなく、国商とでもいうべきではないだろうか”(P.196)とする。
単に政商とするには、国政に強い影響を保持し、単に国士とするには、国鉄民営化かJR東海での実績は、やはり一台の傑物と言える。
活動範囲が多岐にわたるため、取材範囲も表から裏まで多岐にわたるが、そこは著者の強みで網羅されている。実名大目で、直近の一連の時代的案件を追えている良書。
NHKや霞ヶ関人事のあたりが、個人的には新情報。面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2023年5月2日
読了日 : 2023年5月2日
本棚登録日 : 2023年5月2日

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