楡家の人びと 第二部 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2011年7月5日発売)
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本棚登録 : 346
感想 : 23
5

楡基一郎の死後、火災で焼け落ちた青山の「楡脳病科病院」は、松原に本院を移すことに。
基一郎の長女・龍子の夫、徹吉が院長になるが、彼は義父ほどのカリスマ性は持ち合わせていなかった。
ますます生前の基一郎が伝説化され、それが徹吉の重荷となっていく。

また、基一郎の死とともに、それぞれに個性の強い家族がいよいよばらばらになって漂流していく様が描かれる。
さまざまな死が描かれるため、本作は第一部にあったユーモアがいくらか暗い深刻さを増す。そのぶん、何か陰惨な感じが漂う。

時代的にも、第一部の大正時代の明るさが、昭和に入って徐々にかげりをおび、太平洋戦争へと突入していく。

何より生々しかったのは、その過程の描かれ方で、こうしていつのまにか戦争が始まったのだということがほんとうにリアルに納得できる。巨大な狂気の雲が日本を席巻していく。
第二部は凄みのある巻だった。
第一部がすでに懐かしい。

楡医院院長の徹吉とその妻龍子とその息子・周二の距離感が、この時代を象徴している気がしてならなかった。
書き下ろしの第三部では、いよいよ戦中戦後の様子が描かれるのか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・詩
感想投稿日 : 2024年1月13日
読了日 : 2024年1月13日
本棚登録日 : 2024年1月13日

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