チリンのすず (フレーベルのえほん 27)

  • フレーベル館 (1978年1月1日発売)
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感想 : 55
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終戦記念日に読む。

子羊チリンは、オオカミのウォーに母親を殺されてしまう。チリンはウォーに弟子入りを申し出る。ウォーはみんなの嫌われ者だったから、チリンが弟子入りを志願してきたとき嬉しかった。

ウォーは熱心に指導し、チリンは強く逞しくなり、その様はオオカミさながら。ウォーとふたりで羊小屋を襲う予定だった日、チリンはウォーを殺して母親の敵討ちを果たす。ウォーは、お前に殺されて良かったと言って死んでいく。

チリンの心は晴れない。チリンは、恨んでいたはずのウォーを父親のように慕っていた自分に気付き、羊の群れにも戻らず、ひとりぼっちで生きていく。

殺し合い・破壊・暴力で何かを解決しようとしても虚しい連鎖が起こるばかり。完全な悪人はいない。敵も誰かの息子娘であり、もしかしたら誰かの親かもしれない。

チリンは父(的存在)も母も暴力で失ったことになる。一方は自分の手で殺めてしまった。
大切な人を殺された立場、殺してしまった立場、どちらの視点もチリンの中にある。
世界の縮図をみている気持ちになったし、チリンが兵士の姿にも重なった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2022
感想投稿日 : 2022年8月16日
読了日 : 2022年8月16日
本棚登録日 : 2022年8月16日

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