ハイパーハードボイルドグルメリポート

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2020年3月19日発売)
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感想 : 122
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『ヤバイ世界のヤバイ奴らは何を食っているんだ?」

ディレクター一人でカメラを携え、危険な地域に、物怖じすることなく立ち入るー。
彼が写すのは、食事をすることを通してみた、彼らの生活。
それを映像化したのが、テレビ東京の「ハイパーハードボイルドグルメリポート」。
そして今回書籍化したのがこちらの本であるが、
番組で放送したのが、本で書かれた全ての千分の一、と冒頭で述べるほど、内容は濃い。

リベリア、台湾、ロシア、ケニア…。4カ国の中での出来事が語られるこの物語は、今まで読んできた本の中でも、かなり真に迫った現実を、休む間もなく突きつけ続けてくる。

読み終えて、最も衝撃だったのは、物語で最初に訪れたリベリアだった。
著者が述べるところの「世界中の不幸の盛り合わせ」みたいな国であるリベリア。

日本からの支援物資は転売され、それを買う村人。椅子を持ち歩くのは、置いておくと盗まれるから、という子供…。
さらには、「エボラ出血熱」による惨たらしい死。
こうして不幸渦巻く現実に、エボラでさえ、富裕国による陰謀説だと唱える人もいる。そうしなければ、受け入れられない、という。

どうしても、比べて考えてしまう。
誰かと比べて自分は幸せだとか、優位だとか劣っているだとか。
しかしそんな薄っぺらなことを、この本が伝えたかったように思えない。
いや、きっとこう感じて欲しい、というわけではなく、もちろん筆者が感じたことも綴ってはあるけれども、ただただ事実のみを描きだして、読んだときにどう感じるかを問いかけてくるような気がした。

振り返る。
私たちは食べる。どんなに贅沢な生活を送っている人も、明日生きられるかもわからない人も。ならば、食べることを通じてなら、あらゆる人の生き様を垣間見ることができるのではないか。その着眼点には、思わず脱帽。

こんな短文でこの本のエッセンスは、まとまりきらない。でもこれだけは言える。
心して読んでほしい。そして読書を通じて味わってほしい。そんな一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会学
感想投稿日 : 2020年5月3日
読了日 : 2020年5月3日
本棚登録日 : 2020年5月2日

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