生命とは何か: 物理的にみた生細胞 (岩波文庫 青 946-1)

  • 岩波書店 (2008年5月16日発売)
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私の体は自然法則に従って、1つの純粋な機械じかけとして働きを営んでいる。にもかかわらず、私は私がその運動の支配者であり、その運動の結果を予見し、その結果が生命に関わる重大なものである場合には、その全責任を感ずると同時に全責任を負っている。つまり私であると感じた意識的な心は、原子の運動を自然法則に従って制御する人間である。

そして、思考のために起こる事象が少なくとも高い精度で厳密な物理的法則に従うべきことを意味する。思考器官と外界との間に起こる相互作用を成り立たせるための物理的秩序性を持っていなければならない。

小難しい文章だが、物理学者が生命、とりわけ意識を持つ生命を表現するとこうなる。つまり、思考すらも、物理的な秩序に基づき行われるもの。それはよく分かる。脳機能の欠損により思考や認知が不可能になれば、それは秩序を保てているとは言えない。故に、脳死のような概念が可能となるのだろう。

私たちが思考と呼ぶところのものは、それ自身秩序正しいものであること。ある一定程度の秩序正しさを備えた知覚あるいは経験のみを対象としそのような素材にのみ適用されること。

生命とは何か。そこから哲学を排し、擬人化や感情移入を排し、単に生理学、生物学、物理学でアプローチする時、あまりにも人間はシンプルであり、日常は、社会性を複雑に考え過ぎている事に気づくのかも知れない。

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感想投稿日 : 2023年10月29日
読了日 : 2023年10月29日
本棚登録日 : 2023年10月28日

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