サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

  • 河出書房新社 (2016年9月8日発売)
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我々の生きる世界は集団妄想の中。認知革命により、組織や国家の力を活用する事になったサピエンスは、エネルギーを使いこなし、科学革命を起こす。成長を前提とした資本主義の後押しもあり、対立を乗り越えながらも経済合理的な判断により、次々とイノベーションは進む。下巻は、一気に近代の話に入り、科学と哲学の領域へ。

永遠の命。不死ではなく、非死。これは物理的な事故のような死は避けられないが、老衰や病気に対しては臓器を入れ替える事で生きながらえる事を可能とするという意味。この研究プロジェクトは、不死を求めた古代シュメールの神話ギルガメッシュにちなんで、ギルガメッシュプロジェクトというらしい。もはや手が届かない話ではなくなってくる。

仮に非死、アモータルが叶うとして。その恩恵を得られるのは、富裕層のみ。サピエンスは分断されるのではないか。幸福感は、経済の発展に比例せずある程度、衣食住が保障された所で頭打ちになるらしい。中世よりも、近代が幸福ということはない。寧ろ、外の世界が見え、その比較によって自らの不幸を嘆く機会は、現代の方が多い。サピエンスは共通主観によって纏まるが、経済格差によって分断する恐れがある。

科学を制御するのも倫理やモラル、宗教観などの認知、共通主観。サピエンスは、神話のもとに地球上の覇者になり得たが、神話は認識によって多様性を生むために分断を促し、経済格差、科学や宗教、歴史認識など世界中でまだ折り合いのつかぬ問題を抱えている。さて、どう生きるべきか。

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感想投稿日 : 2022年4月9日
読了日 : 2022年4月9日
本棚登録日 : 2022年4月9日

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