父・金正日と私 金正男独占告白

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年1月19日発売)
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感想 : 95
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故・金正日総書記の長男、金正男氏。
2001年に東京ディズニーランド観光を目的に、日本に不正入国しようとして話題になりました。
その独特の風貌も相俟ってドラ息子的イメージで世間に捉えられていますが、本書を読むと全く印象が変わります。

2004年に北京国際空港で偶然に正男氏と出会った著者。
渡した名刺のメールアドレスに正男氏からのeメールが届いたことを契機に、途中数年間の中断を挟みながら、150通のメール交換と二度の独占インタビューが実現します。

メール交換もインタビューも、ほぼ一方的に著者が質問を投げかけ、正男氏が慎重に答えるという形式で繰り返されます。
そのやり取りの中で、若い頃から欧州へ留学し国際感覚を身に付けた正男氏の理知的で良識的なパーソナリティが浮かび上がってきます。
母国北朝鮮の人民を救うためには中国式の改革・開放政策が必要だというのが持論の正男氏は、父・金正日総書記にそれを進言したがために疎まれ、後継の座を弟・金正恩に譲ることになったと語る本書。
正男氏自身は世襲に反対なんですけどね。
で、その点については金正日総書記も同じ考えであったが、政権の安定のために止むを得ず正恩氏への世襲をせざるを得なかった、と正男氏は見解を述べています。

著者は、本書の最後に、北朝鮮の混乱を最も恐れる中国政府が、正恩政権が不安定化した場合の「切り札」として正男氏をバックアップしているのではないかとの仮説を語っています。
が、その点についての論拠は弱いかな、というか殆ど論拠は挙げられていません。
正男氏がバランス感覚のある理性的な人物であることは本書によりたいへんよく理解できるのですが、果たしてあの異形の国家をまとめていけるだけの大人物であるのかどうかはやや疑問な気がします。

正直、単調なメールのやり取りが延々と収録されているので、読み物としてはやや退屈で途中で飽きがくるかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年1月6日
読了日 : 2012年11月24日
本棚登録日 : 2019年1月6日

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