白石一文の作品を幾つか読んできたが、初めて女性が主人公のものに当たった。そのせいか、生む性としての女性とそうでない男性の関係とか、そういう本質が隠されている社会の実態というところに焦点が当てられている気がする。その上で思うのは、白石作品には、世の中の悲惨な状況を救わなければならない、というメッセージを持つものが多いということ。本作でも、血を分けた子供を生み育てることも大切だが、だからといって、家族という小さい集団さえ幸福ならば、その外で悲惨な境遇にいる弱者を無視してよいわけではない、というメッセージを感じた。
このほか、本作は、人と人との不思議な縁について、一見関係ないように見えても実はどこかでつながっているということを小説らしい手法で描き出し、そのスリリングな展開には惹かれるのだが、残念ながら、登場人物が多すぎて、名前や関係性が覚えられず、しばしば戸惑った。そうやって、すんなりと読み進められなかったのは、少し残念。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2016年3月31日
- 読了日 : 2016年3月31日
- 本棚登録日 : 2016年3月31日
みんなの感想をみる