第二次世界大戦で、主に独ソ戦に従事した女性への戦争体験記をまとめた一作。
1978年から聞き取りをはじめ、1985年に出版されたらしい。2015年にノーベル賞を取った作品だが、日本語版は2008年まで出ていなかったらしい。
狙撃兵が初めて敵兵を狙撃した瞬間、死に向き合った看護兵、祈りを覚えた歩兵。
そして、戦地で色を失った人生が戦争の終了とともにカラフルで音に溢れた世界を取り戻す姿。戦後になっても人の死を当たり前とし動じなくなる姿。
勝利を強いプライドとして生きる女性、忘れたい思い出として封印する女性、人を殺めた自らの罪に苦しむ姿、戦争の過去への向き合い方も人それぞれ。
戦争にかかわる仕事が実に多岐にわたり、その多くに女性が関わった事実がわかる。過酷で残酷な戦争に従事しながらも、英雄と扱われたのは”狙撃の女王”リュドミラ・パヴリチェンコなど、ごく限られた人。
戦争で国のために己を犠牲にした多くの女性は、戦後口を噤んだからこそ、本作の意義が大きい。
個々人の語りはとめどなく、まとまりはないが、その”理解しがたさ”が真実だと思うし、アレクシェーヴィッチ氏のまとめが秀逸で読みにくさは感じません。
”戦争は女の顔をしていない”というタイトルも見事であると思います。ノン・フィクションなので、もはやこれは「読んでほしい」としかならない。
漫画版もあるということで、それはそれで読んでみたいと思います。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ドキュメンタリー
- 感想投稿日 : 2023年5月6日
- 読了日 : 2022年12月24日
- 本棚登録日 : 2022年2月27日
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