JASRACとヤマハの音楽教室での版権利用にかかる訴訟をテーマにした一作。
まさかのスパイもの。
主人公の橘は音楽の版権を管理する全著連に勤務する。
少年時代にチェロに打ち込んだ彼は、上司の命令でミカサ社の運営する音楽教室での音楽利用に対する著作権徴収に向けた証拠集めのためにレッスンに通うことになる。潜入調査の名目で入りながらも、軽やかに演奏する浅羽先生とのレッスンの中で、音楽に情熱を覚え、ともにチェロを楽しむ仲間と出会い、コンサートにも参加する。
そして少しずつ裁判の準備が進み、証拠が集まる中、浅羽はコンクールへの出場を決意する。そして橘は自らのスパイとしての姿を再度問い直す。
スパイもののスリルと葛藤もありながら、トラウマを抱えた青年が音楽の力と緩やかな人間関係で瓦解していく姿が描かれる。テーマ選びが秀逸です。著作権利用や自らの立場について、橘が滔々と語るシーンは心臓がキュっとなります。比較的予想できる展開でしたが、キャラクターが魅力的で一気に読んでしまいました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2023年10月29日
- 読了日 : 2023年10月14日
- 本棚登録日 : 2023年10月14日
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