スウィングガールズ スタンダード・エディション [DVD]

監督 : 矢口史靖 
出演 : 上野樹里  貫地谷しほり  本仮屋ユイカ  豊島由佳梨  平岡祐太  竹中直人  谷啓  徳井優 
  • 東宝
3.66
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本棚登録 : 2090
感想 : 322
5

山形県の高校を舞台に、女の子達によるジャズバンドを描いた青春映画。
これは最高!!

この手の映画のお約束は、なんといっても最後の演奏シーン。ここでどれだけ盛り上がれるかで映画のできが決まります。
スウィングガールズは見事にそれに成功していて、雪にまみれたトロい格好で会場に現れて観客に笑われながらも、冒頭、素晴らしい演奏をぶちかまして観客をオオと黙らせる瞬間、あのピーとも音を出せなかった彼女らが、よくぞここまでと思わず涙ぐんでしまいます(それはちとおおげさか)。そしてトランペット、トロンボ-ン、ドラムといった主要メンバーの見せ場を経て、うわあ、そこまでやるかというぐらい見事な主人公のテナーサックスのソロパートは背筋がぞくぞくするほどのかっこよさで、楽器を手にしてからこの場にいたるまでの映画の2時間がこの瞬間に結実します。

ここで成功したということは、それまでの経緯も成功していたということにほかならず、冒頭のカッタルイイ数学の補習授業から、軽音楽部の弁当配達→ただ食い→食中毒→ピンチヒッターとしてジャズバンド結成→軽音楽部復活でバンド解散→パソコン・ゲーム機を売り飛ばしてサックス購入→バンドリーダーの男の子と川辺での劇的再会(個人的にはなぜだかひどく感動)を経て、それからも山あり谷あり、いろんな出来事をちりばめて、最後まですごくオモシロく仕上がっています。非常に楽しい映画です。

マドンナ役の白石美保はいい感じ。この種の女性にいかにもありがちな鈍感さとわがままさとかわいらしさがピッタリのハマリ役です。それにこの人山形県出身なのと思わせるぐらい方言が自然に聞こえます。

竹中直人。この人はどんな役をしても「過剰な演技をする竹中直人」を竹中直人自身が演じていますというふうにしか見えないんでちょっと邪魔くさい。うまくはまったのは周防監督の「Shall we ダンス?]」と「シコふんじゃった。」だけのような気がする。きらいではないんですけどね。
この映画でも別に彼でなくてもいいんじゃないかと思わせますが、でも彼が出てなったらこの映画の印象もだいぶ変わっただろうなという気もするんで、う~ん、ちょっと難しい。彼は強烈なスパイスなんで、材料がよほどしっかりしてないと料理が壊れてしまうんでしょうね。

バンドリーダーの男子高生のフヤフヤした感じもいいし、自動車工の兄弟には大笑い。
「音楽や楽器が好きな訳ではない。なんでも磨くのが趣味なのだ。就職浪人中、暇に任せて公園で泥だんごを作り、ピカピカに磨いていた所を店長に抜擢されて、この店に就職した。決して怒っているのではなく、ああいう愛想のない顔なだけ」の楽器店の女性店員もいい。

それぞれのエピソードもきめが細かくて、たとえばバンドがいったん解散し、夏休みが終わった学校でバンドのトランペッターとすれ違い、クラスが違うので声をかけかねるシーンとか(切ないなあ)、そのトランペッターが本番前、いなくなったペットのネズミのかわりにぬいぐるみをそっと楽器に飾るシーンとか、トロンボーンの内気な女の子が、あたふたしながら演奏に入ろうとするメンバーを厳しく制止し、音合わせをやらせて全員が落ち着くシーンとか、それとは逆に破天荒な展開で唖然とさせられるイノシシ退治のシ-ンとか(大爆笑)、唯一スベッているのが「人間には2種類ある」と野球部の生徒に3度云わせる恥ずかしいシーンだけど、それはまあ大目にみましょう。

この映画は、見終わったあと、ニコニコしながら映画館を出てこれます。それになんだかちょっと元気が出てきます。そんな素晴らしい映画です。

さらに加えて公式サイトもイイ!
無意味なまでに詳細なキャスト紹介(上の楽器店員の紹介もそう)とか、もう最高(笑)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 映画:邦画
感想投稿日 : 2018年12月17日
読了日 : 2004年10月9日
本棚登録日 : 2018年12月17日

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