自由と国家: いま「憲法」のもつ意味 (岩波新書 新赤版 93)

著者 :
  • 岩波書店 (1989年11月20日発売)
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感想 : 10

1989年刊。著者は東京大学法学部教授。◆近代、つまり仏革命以降の憲法の意義に関し、憲法先駆国である英米仏、そして独の変遷を踏まえつつ、フランス革命の正負の影響を論じ、他方、独帝国憲法の後継というべき帝国憲法から現憲法への変遷、連続性と断続性を論じ、自由とその前提としての人間の尊厳を憲法で保障する意味を解説する。◇という内容で、個人的にはしっくりくる。また、仏革命の意義を経済面と政治・法学面とで峻別する視点は得心。◇とはいえ、人権の普遍性を言うには、各国憲法の内容の違い、国の歴史に左右される変遷を踏まえ、
成文に顕出されるとは限らない自由権規定に関し、各国憲法の共通項の抽出の要を感じるが、そういう視点は余り感じない。◇また、批判的検討をすべき共産主義国憲法にも規定上は自由保障がある(法律・国家による留保大という問題に加え、運用面の問題多いが)ことも等閑視。イスラム圏のコーランも同様。◆とはいえ、旧憲法では仮設でしかない脆弱な立憲主義を政治的に覆滅したと評しうる天皇機関説事件。これが日本憲法史上の画期かつ痛恨の事態だったとの点は、過日読破した「天皇機関説事件」を踏まえると成程の感。◆仏革命は後学テーマ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月24日
読了日 : 2017年1月24日
本棚登録日 : 2017年1月24日

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