技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由

著者 :
  • ダイヤモンド社 (2009年7月31日発売)
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感想 : 98

2008年刊。

 一旦は頂点を極めた日本の製造業は大きな曲がり角、いや衰退過程にあり、例えばそれは、近い将来にモジュール化を想定できる電気自動車が主流に据えられそうな自動車業界も同様だ。
 本書はかような現状の認知と、これを踏まえ目指すべき目標を示そうとする書。

 もっとも、例えば、本書提示の知財戦略は、90年代での言及とさして変わらず、①インテル的な中枢部材販売と機器製造工程のパッケージ、②iPhoneのように機器と利用方法とのパッケージという実例自体に多少の変動が見受けられるのみである。
 つまり目指すべき到達点は変わっていない。それは、問題がより深刻化しているのに何も対策が打てていないということに他ならない。
 ならば重要なのは、そこで求められる人材育成の方法論、青少年の教育、現場トレーニングの内実、上層部が意図すべき注意点の具体的方法論であろう。

 が、本書でそれが触れられるわけではない。カッコいい分類・分析用語と実例の新鮮さ、そして説明のための比喩の面白さのみの本書は、全くの期待外れである。

 まあ約10年前の、この種の書を喜々と読破している私もどうかと思うが…。

 著者は東京大学特任教授(東京大学イノベーションマネージメントスクール校長役)

 なお、製品の商品スバンの極短期化により、従来の所謂下請け系列型・垂直型の製品開発・販売で投下資金回収・利潤確保が困難な中、技術やノウハウ開示、或いは個々の商品毎で製造・販売の協同先の変容すら、想定される以上、映画などの製作委員会方式を製造業に如何に落とし込むか、がウオッチすべき視座かもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2016年12月15日
読了日 : 2016年12月15日
本棚登録日 : 2016年12月15日

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