『水晶幻想/禽獣』は微妙だったものの、先日『雪国』にガツンとやられた。
次は何がいいのだろう…と思い、取り敢えずコレを手に取った。
初心者向けに短めにザーッと紹介してくれているので助かる。
本書によるとやはり『伊豆の踊子』スタートで、次に読むと良いとされているのが『雪国』だったので、さてどうするか…。
気になっていたのは『眠れる美女』と『山の音』。
『雪国』が良すぎて、次でがっかりしたくない感があるというのが正直なところ。
齋藤孝が、川端の文章が如何に官能的で美しいかを巧みな言葉で表現されていて良かった。
が、直後に『雪国』を名古屋弁でやってみるという暴挙に出ており、流石に引いた。
なんてことを。
齋藤先生ご本人も"暴挙"と仰られているし、"破壊"がどーたらとお話になられてはいたけれど、
それにしてもあんまりだ。
正直私には、そうして壊すことの意味がわからなかった。
壊してみなくとも、川端の描く女性の美しさは明確だからだ。
石田衣良は川端の小説を、"美しい「あいまい」さ"と表現していた。
角田光代は、高校一年の時に『伊豆の踊子』を読んで"まったくつまらない"との感想を残したとのこと。
だが、"つまらないのは「伊豆の踊子」ではなく私自身であった、と気付くのは、感想文から十五年後の………"と続く。
"そうして川端康成は、映像よりも確かに、映像よりも美しく、映像よりも強烈に、その光景を読み手の内側にねじこんでくる。あんなに短い言葉の連なりで。"
『禽獣』には不快感を抱いたので気にしなかったが、川端が犬や鳥が大好きだったことを、島内景二先生の評伝で知った。
そして"川端が執着したのは「少女」であって……"、"お人形さんのような美に心ひかれたのだ。"
そして"性愛"という意味ではなく、"温かい肌と肌との接触"を願う。
そうだよねぇ。
それはもう、初心者の私でさえ感じる部分だもの。
『夕景色の鏡』という作品の、"……つまり写るものと写す鏡とが、映画の二重写しのように動くのだった"という汽車の窓の描写を取り上げており、本書文中にもある通り、『雪国』でも使われた技法じゃん!と興味深かった。
昭和五年の雑誌インタビューに答えたアンケートも面白かった。(P68に写真あり)
1~10の回答で、既に川端康成という人の輪郭が見えるようだ。
「1.妻はなしに妾と暮らしたいと思います」
「6.仕事は一切旅先でしたいと思います」
等々。
"昭和四十七年四月十六日、逗子の仕事部屋でガス管をくわえて自殺している川端の姿が発見された。"
本書を読み終えて、当初から思っていた、次は『眠れる美女』か『山の音』にしようという思いは固まった。
どちらにするかは決めてないけれど、再び川端作品を手に取るときは、どちらかにしようと思う。
『夕景色の鏡』も少し気になりつつ…。
- 感想投稿日 : 2023年10月23日
- 読了日 : 2023年10月23日
- 本棚登録日 : 2023年10月23日
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