ミステリーズ《完全版》 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1998年7月15日発売)
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本棚登録 : 323
感想 : 33

ストーリーテリングや技巧が存分に発揮された作品集。読み直すとキャラクターが素敵だった。偏執的でどこか地続きなキャラクター像。それを真摯でユーモラスに描く。読後にぽっかり穴があいた気がするのは物語が愛おしかったからなのだと気づいた。ミステリ的には『「あなたが目撃者です」』が。異色作家的には『いいニュース、悪いニュース』『「私が犯人だ」』『蒐集の鬼』がお気に入り。『《世界劇場》の鼓動』はストーリーよりもシーンが印象的な作品。『解決ドミノ倒し』もバタバタとしていて楽しい作品だが、作者曰くどれだけどんでん返しを仕込めるかという趣向なので、技巧的にも優れている作品。『密室症候群』は両面が作中作を書いている体で物語が進むが、どんどん水位が上がっていくような息苦しさが好印象。そしてラストに戦慄する。『禍なるかな、いま笑う死者よ』や『音のかたち』は異色作家短編のようなブラックユーモアが心地良い。後者はダールの某短編を思い出してしまった。この二作の底にある狂気はダールに近いかもしれない。『不在のお茶会』については途中理解を放棄してしまったので、上手く乗れなかったのが反省点。全体として読者の不安を煽るのが上手い短編集だと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ
感想投稿日 : 2015年5月8日
読了日 : 2015年2月11日
本棚登録日 : 2015年2月11日

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