流浪の月

著者 :
  • 東京創元社 (2019年8月29日発売)
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本棚登録 : 27115
感想 : 2836
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本屋大賞候補作ということで購入。

登場人物の視点によって、解釈が大きく変わる印象でした。
主人公の更紗としては、この家から逃れたかったのに一つの行動が、一生消えることない烙印を押すことへと発展していきます。第三者から見れば、誘拐事件として取り扱ったために、悪い印象を与えています。
他にも様々な人物の視点で見ると、一つの事実があるのに多数の解釈が生まれるので、色々と考えさせられました。
恋愛小説でもあり、ヒューマンドラマとしても読めました。
当事者にしかわからない真実、周りからの思い込みなどが次々と歪になっていき、正しいことの難しさが垣間見れました。複雑な心情が簡単に病気でくくられることに憤りもありましたし、第三者はこうも雑に事件に扱うことにも憤りがありました。結局、真実は当事者にしかわからないことにリアル感があるんですが、哀しくもありました。我々世間としては、そっとしてやることが正解かと思います。正義と思って、ネットにさらしたり、週刊誌に売ったりと安易に暴くようなことは、もう一度考え直したほうが良いかと思います。
そういった点で考えると、色々考えさせられました。
最後は冷酷だけれどもちょっと暖かい部分も垣間見れたので、良い方向へと迎えればと思います。

凪良さんの小説は初めてでしたが、登場人物の心情が繊細でした。表面的には静かではあるものの、奥の方で沸々と湧き上がる思いが如実に表現されていました。BL作家としても活躍されているためか、世界観は現実的ではあるものの、オブラートを包んだような雰囲気を醸し出していました。
ちょっとしかBL作品は読んだことがないのですが、どの作家も人物の丁寧な心情は、さすがだなと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年2月
感想投稿日 : 2020年2月5日
読了日 : 2020年2月5日
本棚登録日 : 2020年2月5日

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