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シンガーソングライターとして活動するも、周囲から“まじめすぎ”、“普通すぎ”と言われることに悩むアキ。そんな彼がひょんなことから出会ったのは、空気を読むことが苦手で“普通になりたい”と思っている個性的な女性、莉子だった。「自由な莉子と付き合えば、自分も変われるのでは」と思うアキ。「真面目なアキと付き合うことで、自分も普通になれるのでは」と思う莉子。そんなきっかけで交際を始めた正反対の二人は、やがて心から惹かれ合うが――。 東京で生きる男女の等身大の恋を描く、音楽×ラブストーリー!
元声優とミュージシャン、それぞれの視点で相手に対する思い、仕事に対する葛藤、それまでの苦悩などが描かれているのですが、特にミュージシャンの苦悩は作家自身とリンクしている⁉︎と思うくらい、丁寧に描かれていました。
河邉さんは作詞家の一面もあり、小説の中では、短い文章でぐっと心を掴まされるような要素を含んでいて、河邉さんならではの「色」が引き出されています。
個人的には、今回はそういったものは控えめだった印象でした。もちろん歌詞も登場したり、文章の中にもちょっと立ち止まりたくなるようなフレーズがあったのですが、初期作と比べると、普通の小説寄りにいっているかなと思いました。
話の展開としては、ラブストーリーということで、二人の恋愛模様を丁寧に描いているのですが、ちょっと温めの湯に浸かっているようでした。
思わず、「しっかりしろ。」や「シャキッとしなさい」といった喝を入れたくなるくらい、二人の関係性はゆっくりと時間を流れていきます。
焦ったいなと思ったのですが、周囲の登場人物がバシッと喝を入れるかのように登場するので、物語としては、ぐっと引き締まって、メリハリのある感じになっていました。
突然の出会いに始まり、距離が近づくも、気持ちのすれ違いが発生してしまうという恋愛小説としては王道的な展開なのですが、それぞれが抱える仕事への葛藤、自分との戦いなど、心理描写を繊細に描かれていて、心地よい雰囲気を醸し出していました。
- 感想投稿日 : 2023年3月17日
- 読了日 : 2023年3月16日
- 本棚登録日 : 2023年3月16日
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