昭和天皇 第一部 日露戦争と乃木希典の死 (文春文庫 ふ 12-8)

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  • 文藝春秋 (2011年2月10日発売)
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感想 : 16
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非常に上質な、芳醇たる日本酒を飲んだ気分。

渋江抽斎のごとく、一人の人間から、彼を取り巻く人間模様が、鮮やかに描写される。渋江抽斎と違うのは、それが昭和天皇であり、周囲の人間は、乃木希典であり、山縣有朋であり、ヒットラーであるということ。
本著は天皇の客観的分析ではなく、天皇の生きた時代と人を緻密に再現することで、我々に天皇の目を与えてくれる。彼は、こうした世界で、物事を見ていたのだ、と。
そしてすでに1巻で見えてくるのは、明るい明治、暗い昭和。
元勲たちを失い、カリスマ明治天皇が崩御し、新たな政治の代表・原敬も斃れたのちの、意思決定機関なき世界。。。

福田和也の博覧強記ぶりが存分に味わえるのも楽しみのひとつ。
昭和天皇がダーウィンとリンカーンの銅像を飾っていた、乃木希典のストイシズム、西郷に「なくな」といわれ終生守った明治帝。

文章もうまい。まだまだ次巻以降、読む楽しみがあることが嬉しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年12月24日
読了日 : 2017年12月24日
本棚登録日 : 2017年12月24日

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