子供の視点から、父毋を描いた「サイドカーに犬」とやはり子供の視点から母を描いた「猛スピードで母は」の2作品を収録。
両作品とも淡々と日常を描いているが、文章の裏側にある、サイドストーリーを連想させるという高等テクニックを駆使しています。
お気に入りは「サイドカーに犬」で、家出した母の後釜に父の愛人が家に住み着くという話。
破天荒なタイプの父親が家庭をかき乱す原因なのですが、淡々進行していくので、あまり悲壮感を感じさせない。ただ、ところどころで、男女の愛憎をかいま見せるので、これが不意を突かれた感じでドキッとしたりします。
ウマイ!
行間に滲み出す、登場人物の感情が、読み終わった後に、余韻を残してくれてよかった。
ただ、最後の1行は、もっと効果的な使い方ができたのでは?と思います。
「猛スピードで母は」も、一見自由気ままに生活していると思っていた母親が、ある恋愛を通してシングルマザーの悲哀をさらけ出すあたり、非情によかった。
全体的に、重層的に世界を構築しているので、非情に深みを感じる作品だと思いました。
ただ、個人的な好みを言えばもっとサプライズがあった方が好きなので、☆3つ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2012年1月16日
- 読了日 : 2009年4月26日
- 本棚登録日 : 2012年1月16日
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