鏡の影

著者 :
  • ビレッジセンター (2000年6月1日発売)
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本棚登録 : 45
感想 : 8
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16世紀のヨーロッパ。主人公のヨハンは、世界の様態を表す究極の真理を求める話。
様々な登場人物の思想や欲望を重厚な文体で語る力作。
ひとつのの文章に詰まった情報量が非常に高いので、じっくり集中して読まないと、この作品が持つ立体的で重厚な世界観を捉られない。
こんな風に西洋の中世を描ける方ってなかなかいないのではないでしょうか。

特に、作品中に山賊が修道院を襲って集団レイプをするっていう件があるのですが、これが素晴らしい。
山賊達は、夜中に修道院に押し入って女性を裸にして、家畜市場のように尼層を分け合っていく。レイプに対する罪悪感が全くないので、凄惨な場面にも関わらずある種、牧歌的雰囲気の中で事が進行していく。
で、主人公のヨハンは、どうかというと欲望のまま理性を投げ出したい気持ちと、軽蔑している山賊とは違うというプライド又は僅かに残る倫理観の中で揺れ動きながら、どうしていいか分からず一人になる。ところが、誰もいないと思っていた部屋で、隠れていた一人の修道女に遭遇してしまう。
二人だけの閉ざされた世界の中で、ヨハンの欲望が沸々と・・・・というシーンへつながる。
レイプを道義的に裁くとか、虐げられた女性の哀しみにスポットをあてるいうことを敢えてしないために、欲望と理性の中で揺れ動く主人公の心理がダイレクトに伝わってくる。

ネットで調べると平野啓一郎さんが「日蝕」という作品の盗作ネタとして使ったとかいてありました。
どうもこの盗作疑惑を封じ込めるために、新潮社側がこの作品を絶版にしたとか。

平野さんの作品は読んだことがないので、日蝕を読んで比べてみようかなと思いました。

佐藤亜紀さん、作品の素晴らしさに比べて名前が地味だと思います!
改名を検討してみてはどうでしょう?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2012年1月16日
読了日 : 2009年3月29日
本棚登録日 : 2012年1月16日

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