トヨトミの逆襲: 小説・巨大自動車企業

著者 :
  • 小学館 (2019年11月27日発売)
3.94
  • (67)
  • (128)
  • (39)
  • (12)
  • (6)
本棚登録 : 705
感想 : 76

<膜>
ふとしたキッカケから読み始めたシリーズ作品。筆者は経済産業系雑誌か何かの記者らしいが 梶山三郎 という筆名はゴーストライターらしい。基本トヨタ自動車が歩んできた道を面白可笑しく又スキャンダラスに描いている。それだけの事なのに妙に面白い。まあHVだのBEVだの現実の自動車産業界の出来事を詳らかに描いている所が ”そっち系” の読者には受けるのだろう。最新刊の第三巻『トヨトミの世襲』も売れているらしいから良しとするかいな。笑う。

で本書はその第二巻である。シリズのっけ前巻『トヨトミの野望』と同じで尾張に本拠地のある・・・実際トヨタ自動車の本拠地は尾張ではなく三河であるが,トヨタ→トヨトミ トヨタ自動織機→トヨトミ機械,などの企業固有名詞の他は その三河/尾張の設定だけが異なっているので僕は気になる・・・いや実は僕が尾張地方に住んでいるから気になるのであった。すまぬ。

そう云う具合に 相変わらず三河ではなく尾張が トヨトミ自動車 の本拠地になっている。だが今回話題のグループ会社 尾張電子は三河の刈谷市が本社の設定になっており なにやら中途半端で思慮に欠ける感じも否めない。もう一々熟考するのが筆者もめんどくさいんだろうな。疲れてきてるのかもな。もしかすると本作は あまり気乗りがしないのに誰か権力者のご要望(メイレイ ともいうw)で無理やり描いてる,って感じもそこはかとなく漂ってくる。まあ読者は本が面白ければその辺りの事は事情はとりあえずはどうでもいいのだが。


本文86ページに非常に気になる,と云うか僕にとっては意味不明の記述がある。今回準主役の M製作所 で,昼飯を食い終わった従業員達が会社の応接室でくつろいでいる場面で。 ”・・・女性社員が腕によりをかけて作ってくれた昼飯の食器をわきへどけてテーブルの上でトランプに興じていたり・・・”。僕にはこの記述の意味がわからない。M製作所は従業員20人程度の小さな会社。会社内には食堂も無ければもちろん調理設備など無いと思しい。


なのに 女子社員が腕によりをかけて(食器もかたづけずに食後トランプに興ずる)男の従業員達の為に昼飯を作る,ってどういう状況が作者の頭には描かれているのだ?僕にはわからない。小説作品で一番大切な事は「蓋然性」だと僕は思っている。どんな場面を描こうが作者の勝手だが,そのことに蓋然性(そのことが起きることは当然/必然である事)が無いと 小説とはいえ全部が嘘くさくなってしまう。


なんだ なんにも考えてないのかこの作者は,と云う具合に。全体としては非常に分かり易くつじつまも通って読みやすい文章を書くゴーストライターなので,そんな筈はないだろうと,自分の読み方解釈が間違ているのだろうと,何度も読み返してみたがやはり僕には理解不能だった。もちろんそれでも僕の解釈が間違っている可能性はあまだあるのだろう。やれやれ。物語全体の筋とは全く関係ない些末な事ではあるが。(もっとも元々この三文小説には物語全体を貫く「筋」などは無いのだが・・・)

考えてみれば前作もそうだったのだけど、この本は沢山の個別の ”面白い三面記事のようなもの” をうまくまとめて並べて一冊の本にしただけの代物だなぁ。だから面白くない訳が無い。でも一冊の本としての話の流れと繋がりや感じ入る結論はハッキリ言って無い! つまり新聞や経済産業雑誌の記事の様に全部が中途半端で尻切れトンボなんだ。まあ,面白ければ読者はなんでもいいが,このままだと週刊誌の興味本位記事と同じレベルのまま推移しそうだな。まあ面白ければいいんだけれど。大笑い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月25日
読了日 : 2024年1月25日
本棚登録日 : 2024年1月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする