後醍醐天皇 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (2018年4月21日発売)
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鎌倉幕府を倒し、建武の新政を行ったものの3年足らずで後醍醐天皇の政権は崩壊。

反旗を翻した足利尊氏の擁立した京都の北朝に対して、奈良吉野で皇位の正当性を主張、南北朝が並び立つ動乱の時代へ。

1338年、後醍醐天皇は志半ばで非業の死を遂げる。

骸は奈良の吉野に朽ちぬとも、魂は京の空を見つめ続けると言い残し、激動の人生の幕を閉じることになった。

当時においても、後世においても、賛否両論のある君主である。

後醍醐天皇は、伝統的な門閥貴族の合議による政治を否定。

天皇が一君万民の専制君主として強力なリーダーシップを発揮する政体を目指した。

未来の新儀を創出する意欲を持った後醍醐の政治方針は、既得権益を世襲的に保持し続けてきた上級貴族の利害や貴族社会の慣習と相容れず、武士のみならず公家社会内部でも天皇の政治を批判する声は少なくなかった。

また、武家の欲する所領安堵に功のなかった建武政権には足利尊氏は参加しておらず、御家人の意向を背に足利尊氏は武家政権の復活を目指して立ち上がったのであった。

後醍醐天皇の一君万民の政治構想は、のちに国民国家の建設を目指す明治政府の「国体」のイデオロギーに取り入れられ、大日本帝国の政治を呪縛した。

また、天皇の存在は、現代を生きる我々の慣習や規範に影響を与えている。

個性や自分の意思を表現することより、コミュニティ内での公平・平等・均等を良しとする暗黙の空気は、後醍醐天皇の目指した一君万民の政治的イデオロギーによって支えられたものかも分からない。

天皇という存在自体が、今後も変化していく歴史的な存在なのだなという感想を持ちました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年9月9日
読了日 : 2023年9月9日
本棚登録日 : 2023年9月9日

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