津軽 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3564
感想 : 276

土瓶さんのお薦め本です。
ありがとうございました!

昭和19年、津軽風土記の執筆を依頼された太宰治が、故郷の津軽を3週間に渡って旅をした旅行記。
自身のルーツを振り返る本名の津島修治としての、人となりを感じられた作品だなと思った。
自虐的で、卑屈で暗い面ばかり強い印象だったけれど、やっぱり優しい人でもあったんだな…とよくわかった!

故郷津軽の情景や歴史を詳細に説明しているところは、私にはちょっと難しい漢字だったり古い表現、言い回しなど多くてそこは正直、読みにくい部分もあって大変だった…
でも故郷愛を感じられたし、この時代の作品の趣もあって頑張ってなんとか、かんとか読みすすめた感じ…(汗)

でも旧友との、行く先々での和気あいあいとした酒盛りの様子は、何とも微笑ましくホッとして読めたところも多くて面白かった…
特に滑稽に描かれた、ひとりの津軽人の過分な接待ぶりで太宰をもてなす描写や、太宰が宿に持ち込んだ鯛を姿焼きなどの料理ではなくて五つに切られ料理されてしまった時に太宰が拗ねてしまう様子にはクスッとなった。

そんなふうにユーモラスな部分が
いろいろある一方で、
実家の家族たちへの複雑な思いや距離感なども、吐露しているのだが、懐かしい人達と触れあい全体的には、明るく楽しんでいるところがよく伝わってきた。

そして何よりもラストのシーンが感動的!!
子守で教育係の たけ との再会がもう、泣けてしまう。
思いがけない再会で落ち着かない気持ちになって、桜の小枝の花をむしりながら話したりしてしまう…
たけの様子と台詞の中にも、そして太宰治(というか津島修治)の心情描写の中にも、二人の心の深く強い繋がりがあるんだなぁと思えてジーンとさせられた、いい場面だった…
旅の終わりに、生まれてはじめての心の平和を与えてくれるたけの元へと帰りつけてホントに良かったなぁとしみじみした…

そしてラストに記されていた
「さらば読者よ、命あらばまた、他日。
元気で行こう。絶望するな。では失敬。」

この、たった数年後に38歳という若さで…
自殺してしまった事を考えると
どうして〜⁉…と複雑な気持ちになるのだが…。

でも最後に出かけた「津軽」旅行が
心安らぐ素敵な旅行だった事が
わかる作品だったので…
良かった〜

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月25日
読了日 : 2024年1月25日
本棚登録日 : 2024年1月25日

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コメント 10件

つくねさんのコメント
2024/01/25

チーニャさん、こんにちは♪

津軽の表紙の山、岩木山なのかなぁって眺めておりました。
太宰治とかあまりいい印象持っていなかったんですけど
故郷を旅した時は感慨深いものがあった様子なんですね。
お酒ばっか飲んでたのかな?
登山とかしてたりするなら読んでみたい気がしたりなんですが
どうなんだろう?
当時は40歳を前に亡くなる作家とか多かったようで
昭和19年っとゆうと戦時下で降伏する1年前だけど津軽の方はわりと
のんびりできた感じなんですね。



チーニャ、ピーナッツが好きさんのコメント
2024/01/25

しじみさ〜ん、こんにちは♪
そうです、岩木山ですね!!岩木山この表紙も綺麗ですよね〜

太宰も本の中で、こんなふうに書いてますよ…
「したたるほど真蒼で富士山よりもずっと女らしく、十二単衣の裾を銀杏の葉を逆さに立てたようにぱらりとひらいて、左右の均斉も正しく静かに青空に実際、本当に軽く浮かんでいる様な感じなのだ…。津軽富士とも呼ばれている…!」って。
そしてね、確かに戦争末期ですが、東京などの都会と違って津軽の方は自給自足できる農産物あるし、魚介類、山菜など採れるところだからかもしれない、お酒飲んでのシーンも多かったですね(笑)
太宰自身は肺の病気で戦争に行かなくても免除されてたと思いますしね。
この作品でしじみさんが期待するような登山場面は、無かったですかね(笑)金木町から少し東の高流と称する二百メートル足らずの小山に遊びに行った位でしょうか…(笑)
そんな感じでした…•ᴗ•♡

つくねさんのコメント
2024/01/25

チーニャさん、さすが詳しいですね。

なんだか岩木山を口説いてるみたいでさすが太宰治ですね (^^)v
尊敬してた芥川龍之介も槍ヶ岳とか登ってるので太宰治も岩木山あたりは登ってるかなって思ってたんですけどね。

傍らに珈琲を。さんのコメント
2024/01/25

チーニャさん、こんばんは~!
わーい♪私、『津軽』大好きなんです~♪
もしもう少し深められたいようでしたら、新潮社とんぼの本『太宰治と旅する津軽』も一緒に読まれることをお薦めしたいでーす!

チーニャ、ピーナッツが好きさんのコメント
2024/01/25

しじみさん…
イエイエ、しじみさんのほうが私よりもっと詳しいですよ〜(笑)
もしかしたら、岩木山登ってるかもしれない…と思えてきたりしています…自信ないな…(笑)
なので、もしふと気が向いたで大丈夫ですが、そんな時がきたら…
確かめてみてくださいね…(笑)
それから、岩木山を口説いているみたいで……というところ、笑いましたよ…♪
しじみさん、いつも楽しいコメント、ありがとうございます(^^)ᴠ

チーニャ、ピーナッツが好きさんのコメント
2024/01/25

傍らに珈琲を。さん、こんばんは〜!
わぁー、同じです、『津軽』ホント良かったですよねぇ〜♪
わかりました〜(^^)ᴠ
お薦めありがとうございます。
ちょっと、あとになってしまうと思いますが、手にとってみたいと思います〜( ⌯'֊'⌯) ও⸒⸒

つくねさんのコメント
2024/01/25

チーニャさん、
岩木山は登ったことないです。地形図みてこれは津軽平野からみたシルエットだなっとか想像してました。宮沢賢治も登ってるので、行ってみたいのですがなかなか行けません。
そういえば去年、チーニャさんはこの辺り行かれたんですよね。
いいなぁ (*≧∀≦*)

土瓶さんのコメント
2024/01/30

傍らに珈琲を。さんに勧められて読みました。
そしてチーニャさんへ。
次は誰が読むのかな。

たけとの再開は、たけの思いは本当によかった。

チーニャ、ピーナッツが好きさんのコメント
2024/01/30

土瓶さ〜ん、こんばんは!
は〜い、私も読んでみたくなりましたよ、やっぱり良かったです。
たけとの再会のところは泣けてしまいますよね…ホント。
この本、お薦めいただかなくては手にしない本でしたよ。お二人に感謝してます…♪
それから土瓶さん…
インフルだったんですか…?
心配してましたよ…。
大変でしたね…。インフル、辛いかったでしょう…。
…無理なさらないようにお過ごしくださいね!
ありがとうございました。

土瓶さんのコメント
2024/01/30

こちらこそ~(⁠๑⁠¯⁠◡⁠¯⁠๑⁠)

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