土瓶さんのお薦め本です。
ありがとうございました!
昭和19年、津軽風土記の執筆を依頼された太宰治が、故郷の津軽を3週間に渡って旅をした旅行記。
自身のルーツを振り返る本名の津島修治としての、人となりを感じられた作品だなと思った。
自虐的で、卑屈で暗い面ばかり強い印象だったけれど、やっぱり優しい人でもあったんだな…とよくわかった!
故郷津軽の情景や歴史を詳細に説明しているところは、私にはちょっと難しい漢字だったり古い表現、言い回しなど多くてそこは正直、読みにくい部分もあって大変だった…
でも故郷愛を感じられたし、この時代の作品の趣もあって頑張ってなんとか、かんとか読みすすめた感じ…(汗)
でも旧友との、行く先々での和気あいあいとした酒盛りの様子は、何とも微笑ましくホッとして読めたところも多くて面白かった…
特に滑稽に描かれた、ひとりの津軽人の過分な接待ぶりで太宰をもてなす描写や、太宰が宿に持ち込んだ鯛を姿焼きなどの料理ではなくて五つに切られ料理されてしまった時に太宰が拗ねてしまう様子にはクスッとなった。
そんなふうにユーモラスな部分が
いろいろある一方で、
実家の家族たちへの複雑な思いや距離感なども、吐露しているのだが、懐かしい人達と触れあい全体的には、明るく楽しんでいるところがよく伝わってきた。
そして何よりもラストのシーンが感動的!!
子守で教育係の たけ との再会がもう、泣けてしまう。
思いがけない再会で落ち着かない気持ちになって、桜の小枝の花をむしりながら話したりしてしまう…
たけの様子と台詞の中にも、そして太宰治(というか津島修治)の心情描写の中にも、二人の心の深く強い繋がりがあるんだなぁと思えてジーンとさせられた、いい場面だった…
旅の終わりに、生まれてはじめての心の平和を与えてくれるたけの元へと帰りつけてホントに良かったなぁとしみじみした…
そしてラストに記されていた
「さらば読者よ、命あらばまた、他日。
元気で行こう。絶望するな。では失敬。」
この、たった数年後に38歳という若さで…
自殺してしまった事を考えると
どうして〜⁉…と複雑な気持ちになるのだが…。
でも最後に出かけた「津軽」旅行が
心安らぐ素敵な旅行だった事が
わかる作品だったので…
良かった〜
- 感想投稿日 : 2024年1月25日
- 読了日 : 2024年1月25日
- 本棚登録日 : 2024年1月25日
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